2014年08月31日

旋律のリフレイン(34)恋

旋律のリフレイン(34)恋

 リフレインは恋に一生懸命だった。

 生きていたときは振られたり冷たくされたりするのが嫌で、好きな女の子がいても告白はおろか話しかける事すら出来なかった。でも死んで後悔した今、それを恐れてしないなんてやってはいけない。

 リフレインはビーストに冷たくあしらわれても構わず、訓練で忙しい日々の合間を縫ってわずかでもいいからビーストに会いに行った。

 もっと辛辣に拒否されていれば、心の弱いリフレインはきっとくじけていただろう。でもビーストは冷たいとは言っても大した事は無い。無感情にあしらい立ち去るだけだ。きつい拒絶では無かったおかげでリフレインはくじける事無くビーストにアタックを続けられた。

 そんな彼の熱心さが、好意と熱意を裏付ける。口でいくら耳障りのいい事を言っても通じない。心が伝わってこない。何度拒否されても愚直に愛を叫び続ける事だけが、その愛がどんな障害をも乗り越える強さを持つ本物だと証明出来る。

 リフレインの恋が一時の熱病ではなく本物だとわかったビーストは、相変わらずそっけないが態度が軟化していった。

 二人きりでも立ち去らない。さすがに愛をささやいてくれるわけではないが無言で寄り添ってくれる。隣に座れば頭を肩に預けてくれるし、抱き寄せ見つめ合い顔を寄せるとそっと目を伏せ受け入れてくれた。

 リフレインは感覚も快感も無いキスに夢中で、一日に何度でもした。性器が無く肉体的な愛の交わりを出来ない全身サイボーグにとって、キスだけがまともに出来る愛の交わりだった。

 ベンチに座り、抱き合い長いキスを何度もしたあとようやく顔を離したリフレインは、愛しいビーストの憂いを帯びた顔をじっと見つめる。

「僕、幸せだよ。快感はカットされたけど感情は人間のままだ。喜びも幸せもちゃんと感じる事が出来る。肉体の快感なんか必要無い。これだけでもう、僕は十分だ」

 ビーストは顔を伏せ寂しそうな顔をする。

「……そんなのは本当の恋じゃない。私は知っている。本当に好きなら相手の何もかもが欲しい。私は夫に抱かれて子供を授かって、肉体の交わりの果てにある幸せを知っている」

「それを僕に与えられないから僕を拒絶するの? 僕は肉体の交わりや快感なんか無くても君を好きでいられる」

「それはあなたが女を知らない童貞だから。自分でするのとは違う。女を抱いて孕ませるのは男の本能。理性ではなく本能の幸せ。理性の幸せは上澄みにしか過ぎない。その下のドロドロした暗く醜く熱い快感を知らないで愛を語らないでちょうだい」

「きれいな上澄みだけの愛だってあるよ」

「そんな物は無い。愛は濁ってドロドロなのよ。愛や恋は性欲の上澄みにしか過ぎない。きれいな愛は汚い欲望を満たす仮面。上澄みで偽装。相手を誘い込む餌なのよ」

「どうしてそんな風に言うのさ。本当の愛を知っているくせに」

「知っているから言うのよ。全身サイボーグの恋愛なんて上澄みまでしか味わえない。本当の恋じゃない。あなたのようにサイボーグになりたての頃は、恋を求め錯覚する人もいるわ。寂しいのね。でも恋人を求めるのは肉体の慰めを求めているから。感覚の無いキスなんかじゃ満たされない。もっと求め絶対に手に入らない。あなたはいつかきっと、抱けない私への恋が冷めるわ」

「そんな事は無い。僕は」

「もう行くわ」

「行かせない」

 リフレインはベンチから立ち上がったビーストの手を引き乱暴に床に押し倒す。重い機械の身体が機械仕掛けの頑丈な床に押し倒され鈍い音を立てる。

「ひどい音。全然ロマンチックじゃないわ」

「サイボーグにはサイボーグの恋愛があるよ。上辺だけでいいじゃないか。僕は君とずっと一緒にいたい」

「こんなおばさん、あなたみたいな若い子はすぐ飽きるわ」

「怖がっているんだね。いろいろと。でもまだそれを心配する必要なんて無い。いつか冷める気持ちだとしても、この熱い気持ちはきっと死ぬまでの間ぐらい熱を保つよ」

 リフレインは床に押し倒したビーストにのりかかる。キスをして抱きしめ、快感が無くても股の間に脚を入れ腰をすり付ける。

 リフレインが出来もしない性交を求めるほど辛くなる。きっと彼も同じくらい辛くもどかしい。ビーストはリフレインの求めに応えてあげられない。だから彼に辛い想いをさせたくなくて拒絶しているのだ。

「一度死んで、私たちの人生は終わったのよ。サイボーグとして二度目の生を受けたのは戦うため。それ以外の、人間らしい生活を取り戻すためじゃないのよ」

「わかっている。でも僕はハッシュを姉として慕い慰めを求める。彼女は僕を弟として可愛がる事で慰めとする。僕たちの脳は人間なんだ。戦いだけじゃ生きていけない。それを支え前へ進むために慰めを求めているんだ」

「私があなたの慰めだって言うの? ハッシュだけじゃ足りないの?」

「家族への愛情と恋人への愛情は違う。家族の愛が無くてもなお愛する。好きになる。どうしようもなく求める。かなわなくても」

「かなわなくても」

「うん。肉体の快感が得られないのは正直もどかしい。童貞のまま死んだのも後悔の一つだしね。それでも、それを得られなくても永遠に苦しんでも、それでも君を好きなんだビースト。君を求めずにはいられない。ずっと一緒にいてよ」

「……下手な告白。夫がプロポーズしてくれた時はもっと素敵なセリフだったわよ」

「僕はそんなキザじゃないよ。泥臭く頑張るしか出来ない。僕の脳がハイブリッドだとかそんな事は関係無い。僕の取り柄は諦めず頑張る事なんだ」

「人一倍心が脆いくせに」

「だから君という慰めが必要なんだ」

「本当ひどい口説き文句。自分のために女を利用しようって言っているのと同じ」

「ごめん。そんなつもりじゃないんだ。ただ僕は、僕には君が不可欠で、ん」

 リフレインの口はビーストの唇で塞がれた。

 そっとその唇を離し、間近で見つめ合う。

「私があなたに優しくするのは任務だからね。スコルピオの命令。大事な実験体を保護するために優しくしているだけ」

「くす。君の照れ隠しも相当下手くそだね」

「うるさいわ」

 ビーストは口を口で塞いで黙らせる。二人の恋は必要という建前に押されてようやく素直になれた。

 二人は床で抱き合い互いにキスをし合う。長い時間そうしていたこの時間が、生前と死後を合わせても一番幸せだった。

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2014年08月29日

旋律のリフレイン(33)告白

旋律のリフレイン(33)告白

 リフレインは機械施設の壁に手をついてアクセスし、公開情報を得る。ビーストの居所がわかるとリフレインはのろのろとそこへ向かった。

「脚が鉛のように重い。油が切れたのかな」

 そんなわけもなかった。油の循環や濾過なども自動で行っており、調子が悪い時はわかる。脚が重いのは脳がそう錯覚させているからだ。戦闘とはまるで違う緊張がリフレインの脚を重くする。

「せっかく生き返ったんだ。生前出来なかった後悔を、一つでもいいから死ぬ前に果たすんだ」

 生前、リフレインは臆病な少年だった。好きになった女の子がいても遠くから見ているだけ。告白なんて出来ずに学校を卒業し、その子と離ればなれになった。

 何度かそういう経験をした。リフレインは女性経験もなければ付き合った事も無い。それは死んで後悔した事の一つだ。

「ビースト」

 ビーストは戦闘ルームで他の全身サイボーグ三人相手に多人数戦を訓練していた。得意の牙を封じた機能無しの格闘で劣勢を覆す訓練。幹部でありしかも強いビーストは、三人の部下相手にもまるで負けていなかった。

 三人をあっさり蹴散らし、休憩と告げるとビーストは入り口で待つリフレインに歩み寄った。

「何? 訓練で忙しいんだけど」

「あの、ちょっとだけ時間取れないかな。どうしても、今言っておきたいんだ」

「いいよ。みんな。今日の訓練はおしまい。個人の訓練に戻って」

 三人の全身サイボーグの女たちははーいと返事をするといそいそとリフレインとハッシュに敬礼した後部屋を出た。

 リフレインは幹部ではないが、同格の扱いを受ける特殊機体だ。並の全身サイボーグでは歯が立たない。序列を決める戦闘を行わなくてもリフレインはみんなに敬意を持って扱われていた。

 もちろん上辺だけだ。最高の機体と脳のハイブリッド。苦労せずに幹部並の力を手に入れたリフレインを快く思わない者は多い。

 実際はさんざん苦労して何度も死にかけて手に入れた力だ。でもリフレインは半ば軽蔑する視線を受けても取り合わなかった。ハッシュが慰めてくれなければきっと軽蔑をやり過ごす術を身につける前に憎悪を爆発させて取り返しのつかない事になっていただろう。

 二人きりになれる場所へ移動しようと思っていたが、その前にみんな出ていってしまった。今この部屋には二人きり。移動する必要は無いし、ムードのある場所なんてこの機械仕掛けの施設のどこにもありはしない。

 リフレインは部屋の端にあるベンチを手で促す。ビーストはうなずき、二人はベンチへ腰掛ける。

「何? 話って。悩み相談? スコルピオの事?」

「いや、スコルピオの事はハッシュが一番わかっているし力になってあげられる。他人や僕じゃ駄目なんだ。だからハッシュに頼んでスコルピオを任せてきたよ」

「そう」

 ビーストは黙って前を向く。リフレインはその横顔を見ながら脚の間に両手を入れてもじもじする。

「他の話の見当はつかない。何? 話さないなら私別の訓練をするけど」

「あ、あの」

 顔を赤くする機能が搭載されていればいいのに。そうしたらきっとビーストだって何も言えなくても気づいてくれただろう。

 はっきり言葉にしないと通じない。でも言葉が出ない。リフレインはやむなく、ビーストの手を握る。

「何?」

「あの」

「ん?」

 ビーストはリフレインの顔をのぞきこむ。

「あの、ビースト、僕、君の事……」

 声が小さくなる。言おうと意気込んだのに実際には言えなかった。

 まあ、よほど鈍くないなら何を言いたいのかそれでわかる。

「……あなたの気持ちはうれしいけど。私は生前人妻で、子供も産んだ。みんな虐殺された。でももう夫婦になれないし、全身サイボーグにそんなのいらない」

「夫婦っておおげさな。ただ僕は、気持ちを伝えて」

 ビーストが肩を寄せ、リフレインの股間に手を突っ込む。

「う、はあっ? ビースト。何」

「気持ちよくも何ともないでしょ。脳が快感をカットされているからね。見ても興奮しない。機械の身体では何も感じない。でも夫婦なら、それ以前の恋人でも、こういう事をして気持ちよくなるものよ。だから私たちは恋人にもなれない。わかる? 坊や」

「でも」

 しばらく股間をいじられる。もちろんそこに男性器は無い。余分な部位であり再現するのは恥ずかしいだけだ。だから性器は男女ともデザインに含まれなかった。

 リフレインは生前自慰をした事を思い出す。女性に触られればきっとその何倍も気持ちいいはずなのに、まったく何の快楽も得られなかった。

 やがてビーストが手を離す。リフレインは大きなため息をついて脱力する。

「わかった? 人を好きって感情は性欲と結びついている。気持ちいい事したいから好きになるのよ。あなたはまだ人間だった名残があるだけ。その感情は本物じゃないわ。やがて消える」

「ビースト。僕は君に出会って、話して、守られて、その強さを見て。そして無事生きて帰られた輸送機の中で、僕は君と隣合って座り、君とずっと一緒にいたいと、生き延びたいと、失いたくないと思ったんだ」

 リフレインはしどろもどろでも必死にまくしたてる。

「人間やめたてでまだそういう感情が残っているだけよ。脳の錯覚。わかるでしょ。私はもう人間やめて何年も経過している。そんな感情残っちゃいないわ」

「ビースト!」

 どうしていいかわからない。でも彼女を離したくない。笑顔がかわいいのにどうしてそんな冷たい表情しか見せてくれないんだ。

 年齢は離れている。でも彼女は童顔で、背もリフレインと同じくらいだ。胸も疑似とはいえ小さくてかわいらしい。生前の肉体を再現したフォルムは実になまめかしい。たとえ装甲の肌だとしても。

 リフレインは立ち上がり、立ち去ろうとしている彼女を後ろから抱きしめた。

「離して」

「嫌だ。君を離したくない。好きなんだよビースト」

 後ろから抱きしめその耳にささやくようにして、ようやく好きだと言えた。しかしビーストは動じなかった。

「私にはもうそんな感情は残っていないわ。全身サイボーグなら真摯に強さだけを求めなさい。あなたには恋愛なんて余裕は無いはずよ」

「君を好きだから強くなれる。生きて帰ってまた会いたいと思う。余計な感情じゃないよ。生きるために必要な感情だ」

「言ったでしょ? 恋愛感情は性的快感と結びついている。肉体を失い快感が無い私たちは恋愛感情を持ち得ない。持ってもむなしいだけ。もう二度と手に入らない、失われた物に絶望するだけ」

「そんなわけない!」

 リフレインは逆上して、抱きしめたビーストをひっくり返して自分を向かせる。そして間近で見つめ合う。

 するとビーストが顔を近づけキスをした。舌を入れない唇だけのキス。でも生前と同じ顔同士でのキスだ。

 ビーストは強く抱きしめ猛烈なキスをする。舌を入れてきた。そしてかき回す。

 長い時間抱き合いキスをした。ようやくビーストは口を離す。

「わかった? 何をしても感じない。唾液も無い。機械の身体では愛し合う行為全てがまがい物。本物ではない。むなしいだけでしょ」

 リフレインは初めてで、しかも猛烈なキスにへたり込む。感覚も快感も唾液も無いのに頭がくらくらした。

「じゃあね。忘れなさい。いいわね」

 ビーストは振り返って手を振り部屋の入り口を開く。その背に向かってリフレインは叫ぶ。

「これって、僕の事を好きだって事だよね? ビーストも僕の事が好きなんだ。僕はそれをあの輸送機で見つめ合ったときに確信した。僕は諦めないよ。きっと君を振り向かせる。もう二度と後悔したくないんだ。恋にまっすぐ生きたいんだ」

「青臭い」

 ビーストはそう言い立ち去った。リフレインの気持ちを最後に否定しなかった事をリフレインは喜んだ。

「嫌がってない。あのキスだって失った快感を得ようと必死だった。すごいな大人のキスって。快感が無いのに行為だけで興奮しちゃった」

 肉体があったらきっと、あのキスだけで勃起しちゃっただろう。みっともないったらありゃしない。

「格好悪くても無様でも悪あがきでも食らいつく。諦めない。戦闘以上に僕は充実している」

 リフレインはぐっと拳を握りしめ見つめる。以前の自分なら振られただけで諦めるだろう。でも今は、諦めるのが一番格好悪くてしてはいけない事だと身にしみている。

「諦めずに挑もう。そして成し遂げよう。不可能を可能にするんだ。人間みたいに諦めるなんて選択肢、死んで後悔を味わった全身サイボーグには無いんだ」

 部屋を出たビーストは通路を歩いていた。途中、分かれ道にいるさっき戦闘訓練していた三人の部下たちとすれ違う。

 ビーストは浮かれていて、分かれ道の陰にいた三人に気づかない。そのまま通り過ぎた。

 三人の女サイボーグはひそひそと話をする。

「見た今の?」

「見た見た」

「ビーストさんが笑っている所初めて見た」

「ときどき笑うらしいけどね。幼児退行の時とは違う、大人の笑い方。あんなに笑顔で浮かれて私たちを知覚しないなんてあり得ない」

「きっと知覚してもそれどころじゃなかったのよ」

「さっきのリフレインって奴と何かあったのかな」

「何が? 何も無いわよあんなガキ。幼児退行を克服して大人になったビーストさんが構ってあげているだけなんだから」

「でもビーストさんの鼻歌って聞いた事ある?」

「無いけど。幼児退行を克服したのって最近じゃん。いつもはむすっとして無言で、スコルピオ様みたいに怖いけど。あの人だって楽しい事ぐらいあるんじゃない?」

「楽しい事って?」

「さあ」

 三人はひそひそ話し首を傾げる。誰も見ていない所でビーストはスキップさえしていた。

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2014年08月28日

旋律のリフレイン(32)助けを求めて

旋律のリフレイン(32)助けを求めて

 リフレインはハッシュの部屋へ着き、その扉が自動で開く。中には鋼鉄のイスに座ったハッシュがいて本を読んでいた。めがねまでかけている。どちらも全身サイボーグには必要ないが、彼女は一瞬でデータとして取り込め精査出来るのに、わざわざ時間をかけて本を読む事をストレス解消手段としていた。

 伊達めがねをかけたままハッシュが両腕を広げこっちを向いて笑いかける。

「どうしたのリフレイン? またお姉さんに甘えたくなったのかなー? いらっしゃい。可愛がってあげる」

 今ではすっかり実の姉弟のように仲良く、またリフレインも恥ずかしがってそれを嫌がる事をやめている。リフレインはハッシュの腕に飛び込み抱きつく。彼女も包み込むように優しく抱きしめ返す。体温も鼓動も感じないが、愛する人に抱擁されると脳は温かい安らぎを覚える。

 リフレインはハッシュに抱きつき甘えたまま話を切り出す。

「ハッシュ。みんなあれから普通に過ごしている。でもそんなの上辺だけだ。みんな元気が無い。僕もそうだった」

「そんな事は無いわよ。みんな元気よ。私もね。心配してくれたの? やあねえ。弟に心配かけるなんて姉失格ね」

 ハッシュは笑う。いつも通りだ。でも抱きついているおかげで、腕がわずかにこわばったのがわかった。

「ハッシュ。無理しないで。僕が慰めてあげる。思い切り甘えていいよ」

「甘えたいのはあなたでしょ? いつまでたっても甘えん坊さんなんだから」

 ハッシュはあくまでリフレインを甘やかすために抱きしめる。でもリフレインは彼女がすがりついてくるように感じた。

「ハッシュ。スコルピオは神じゃない。彼女を神のように絶対的な存在として崇めていた君にはショックだったろうけど、彼女だって負ける事のある人間だ。それを受け入れてあげて」

「スコルピオは常勝無敗の女神よ。敗北は許されない。あんなの彼女じゃないわ」

 優しかったハッシュが突然敬愛するスコルピオを冒涜した。リフレインはとてもショックだった。

「ハッシュ。彼女だって人間だ。だから負けもする。初めての敗北。モデルとしてもサイボーグとしても一流で他の追随を許さなかった。だから敗北から立ち直る術を知らない。他人の助けが必要なんだ」

「リフレイン。いい? 彼女は一人で立ち直っているわ。強いもの。私なんか必要無いぐらい強い」

「弱った彼女が自分の助けを求めてくれない事にすねているんだね」

「あはははっ。まさか。この私がすねる?」

 ハッシュはリフレインを腕から引き離し自分の胸に手を当てる。

「彼女に私は必要ないわ。必要なら求めるはずでしょう?」

「素直に求めるのは子供の特権だよ。僕のようにね。彼女は大人でプライドが高い。自分から弱音を吐いて誰かにすがりつくのを格好悪いと思っているんだ」

「格好悪いわよお。あのスコルピオが。はっ!」

 ハッシュは馬鹿にしたように笑う。

「彼女はいつも強くて格好良くて一番でなくちゃ。私のあこがれ。女神様でいなくっちゃ」

「君のヒーローなんだね」

「女だからヒロインでしょ。でもヒロインって守られているみたいで一番って感じじゃないわねえ」

「スコルピオはヒーローじゃなくてヒロインだよ。君の助けを待っているお姫様なんだ」

「わかった風な口利くじゃない。誰の入れ知恵?」

「……トランジスタに頼まれたんだ。スコルピオにはハッシュが必要だから、ハッシュを後押ししてあげてくれって」

「彼女の言いそうな事だわ」

 ハッシュは呆れた顔で掌を上に向け肩をすくめる。

「昔の彼女ならそんな甘い事言わなかったのに。他人なんか気にしない。ぴりぴりしてとても嫌な奴だったわ」

「今の彼女はみんなをよく見て想いやっている。いい奴だよ」

「何であんなに変わっちゃったのかしらねえ」

「きっと元々の性格なんだよ。殺されてサイボーグにされてグレていただけさ」

 リフレインにもハッシュにも覚えがある。死んだ事、殺された恐怖、機械の身体。家族も親しい人も殺され別れ、自分だけが機械に適合したからのうのうと生きて孤独。しかもみんなの仇に洗脳されて復讐すら出来ない。

 あの絶望とやりきれなさ。やけっぱちになり荒れていた。誰だって初めはそうだ。だから厳しい教官の指導でそんな事を考えずに戦う事を徹底的に仕込まれる。

「ねえハッシュ。お願いだよ。スコルピオを助けてあげて」

 ハッシュはイスに座ったままうつむく。彼女だって本当はわかっている。でも部下とはいえ敬愛しているとはいえ、自分は誰よりも彼女に近しい親友だと思っていたのだ。初めての敗北で深く傷ついているのに、自分にすら頼ってくれない彼女にハッシュはひどく傷つけられた。

 ハッシュは嫉妬深い。普段はとても穏やかだがときどきそれが顔を見せる。彼女の悪い癖だ。かつてはリフレインに、今はスコルピオに悪意を抱いている。

 リフレインはそんな彼女の心を溶かしたくて手を握る。

「ねえハッシュ。スコルピオを許してあげて」

「許す? 何を?」

「彼女は君に迷惑をかけたくないだけなんだ。遠慮しているだけなんだよ。悪気はこれっぽっちも無い。君を頼りにならない奴だとは思ってなんかいない」

「そんなわけないじゃない。彼女はずっと一人ぼっち。一人でいられるほど強い。群れて慰めあわないといけない私たち弱者とは違うわ」

「彼女はプライドが高いせいで弱みを見せられない。それを見せられ受け止めてあげられるのは僕じゃない。親友の君だけなんだ」

 リフレインでは力になれない。ハッシュ以外の誰にも出来ない事なのだ。

「彼女はどうせ、私なんかお呼びじゃないって言うわよ」

「口で何を言われたって許してあげて。彼女の本心はそうじゃないってわかってあげられるよね?」

 リフレインはあえて子供に語りかけるようにして話す。普段は姉と弟。でも今は、兄と妹だった。

「……リフレイン」

 ハッシュは泣きそうな顔をする。泣く機能があればきっと涙をこぼしている。

「……ありがとう」

 いろいろ言いたかっただろう。言い訳を並べたかっただろう。でもリフレインの優しさに感謝し、ハッシュはいくらでも言える言い訳や憎まれ口を飲み込み、彼女のするべき事を受け入れる。

 ハッシュは立ち上がる。そしてリフレインを自室に残して入り口前に立ち、背を向け顔を上げて話す。涙を見せたくないかのように。

「彼女の敗北がショックだったわ。でもそれ以上に、彼女の力になれない事が悲しかった。でも違った。手を差し伸べる力も失った人には、自分から手を伸ばさなければならなかったんだわ」

「うん」

「じゃあ行ってくるわね」

 ハッシュは努めて明るい声を出し、手を振って背を向けたまま扉を開け歩き去って行く。リフレインはその背を見守りながらほほ笑む。

「きっとハッシュならスコルピオの力になれる。励まし助けてあげられる。スコルピオはハッシュに任せよう。僕は僕の事をしなくちゃ」

 トランジスタに頼まれた任務は果たした。でもまだ、自分に必要な事を果たしていない。

 もういつ死んでもおかしくない。死ぬ前にやっておかないといけない事がある。もう二度と、死んだときに後悔する生き方はしたくなかった。

 サイボーグに心臓は無い。でも脳は覚えている。この緊張。心臓の高鳴り。リフレインは生前一度も出来なかった、女性への告白を今果たそうと部屋を出た。

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2014年08月26日

旋律のリフレイン(31)改造と実験

旋律のリフレイン(31)改造と実験

 自分で考え強くなり成長出来るトランジスタに助けなんているのだろうか? しかしリフレインは無限の可能性を教えてくれた彼女の助けになりたかった。

 開発室につく。そこでは戦闘で大破したトランジスタの修理が行われていた。ここまで大破したら自己修復機能では復元しきれない。部品を補い人の手による修理が必要だ。

 複数の男女が医者のような作業着を着てトランジスタを修理している。彼女は天井から複数のワイヤーで吊るされ首から肩までしかない。

 下のベッドには下半身が横たわっている。胴が無い。胴に搭載する予定の機能を持つ装備が複数、横の台に載っている。

「よーうリフレイン。久しぶりだな。元気か?」

「君は元気そうじゃないね」

 リフレインは苦笑いしながら手を振る。こんな修理をされている姿を見られるのは恥ずかしい事なのだろうか。わからなかった。

「すごいね。新しい装備?」

「ああ。腹って敵の攻撃を食らう的みたいな物だろ。なら何か敵を返り討ちにする装備を追加出来ないかなって」

「これ全部試すの?」

「だいたいな。他の機体の開発に使う前に、装備をあれこれ取り付けて実験してみるんだよ。体のいい実験体さ。新しい装備のデータを取るためのモルモットにされる」

「そのわりにうれしそうだね。屈辱じゃないの?」

「かっかっか。強くなるならこれぐらい我慢してやるぜ。なあ?」

 トランジスタはにやりと笑う。周囲の男や女が苦笑いする。

 トランジスタの性格だ。わがまま放題なのだろう。最近丸くなったとはいえ以前のぴりぴりした彼女ならきっと自分を改造してくれる技師に八つ当たりして殺していたに違いない。

「おい、次はそれつけろよ。ビーム大砲なんてロマンだぜ」

「エネルギー消費が激しくて一発しか撃てませんよ。実用するならもっと細いレーザー兵器が限度かと」

「いいからつけろって。俺はエネルギーの蓄積と回復力が特性の一つなんだ。高出力のビーム兵器でも何発も撃ってやるぜ」

「いえ、サイボーグに搭載出来る限界かと。これは単独で行動する全身サイボーグには向いていません」

「じゃあ何で持ってきたんだよ」

「あなたの好みかと」

「わかっているじゃねえか。かっかっか」

 男の技師とトランジスタは笑い合う。和気あいあいだ。サイボーグの開発はようするに人体実験だ。脳を実験し生き残り適合した脳を使って今度は機体を最適化したり強化したりする。

 その実験では脳の負荷がかかる。ビーム兵器のような高出力の兵器は脳の負荷もエネルギー消費も高く、連続で戦闘をこなさないといけない全身サイボーグは普通、このような弾数制限の厳しい兵器は敬遠する。

 トランジスタは面白がって、他の全身サイボーグが搭載しない兵器もどんどん試す。データだけではわからない。使ってみないと使い勝手や応用方法、そして欠点や改良点はわからないものだ。

 だから実験する。周りの技師たちはわがままなトランジスタに翻弄され困りながらも、他のサイボーグではなかなか搭載させてもらえない開発者魂がこもった実験兵器をあれこれ試せてうれしそうだ。

「僕は実験の邪魔かな?」

「そうだな。俺が実際にどうパワーアップするか楽しみにしていろよ。先に知ると面白くねえだろ」

「あはははは。僕も君を見習って、次に大破したときはいろいろ兵器を試してみようかな」

「そうしろそうしろ。たいていは使えない。でも遊びなんだよ。いろいろなおもちゃで遊ぶんだ。楽しんだ者勝ちさ」

 周りの技師たちが苦笑する。

「私たちが苦労して開発した機体や装備をおもちゃ呼ばわりはないでしょう」

「遊べる物がおもちゃだろ。兵器じゃねえ。その殺傷力が高いからって悪いものだと毛嫌いする事はねえだろ」

「……そう言ってくれるのはあなただけですよ。家族にだってののしられるのに。私たちは人殺しの兵器を造っているんじゃない。科学の限界に挑んでいるチャレンジャーなのです」

「そうそう。そうやって何でも楽しめばいいんだよ。暗くてうじうじしても楽しくねえぞ。なあリフレイン?」

「わかる?」

「お前は素直なままだからなあ。素直なのは好感が持てるが戦闘では致命的だ。次の手が読まれる。フェイクも覚えろよ。それとハッシュの背中を押してやれ」

「何?」

「っと、いけねえ。レイピッドは飲み込みが早いからな。お前みたいな行き当たりばったりで学習するんじゃなくて、結論を言えば自分で推測する。その癖でつい結論だけ言っちまった。あいつ頭いいぜ。馬鹿な子供なのに頭の回転がとても早いんだ。子供ならではの素直な発想って奴かな」

「あのレイピッドが?」

 レイピッドは死んだときまだ十歳だった。その年齢のまま止まっている。幼稚で無邪気、そして浅はかで馬鹿なまま。そう思っていた。しかしある分野においては頭がいいなんて意外だった。

 トランジスタの短気で結論を言ってしまう教え方に合っているという事か。逆にリフレインはトランジスタの教えにぴんと来ない。

「かーっ。お前馬鹿か。スコルピオは敗北で打ちひしがれている。いくら普段通り振る舞おうとそれは虚勢だ。ハッシュも同じ。信仰していたスコルピオに落胆している。まずはハッシュを励ましてやれ。それからあいつにスコルピオを慰めさせろ」

「ええと……?」

「かっ! いいから言うとおりにしろ。ハッシュにはお前が必要で、スコルピオにはハッシュが必要なんだよ。お前にスコルピオの傷は癒せねえよ。それが出来るのは一番の親友であり理解してくれるハッシュだけだ」

「どうしてそんな事がわかるのさ」

「うるせえな。そのぐらいの事がわからない馬鹿に説明する暇はねえよ」

 照れ隠しだろうか。トランジスタはリフレインを追い出したがっている。

「これから実験だからよ。秘密の特訓だぜ。楽しみにしていろよ。いつか戦場で見せてやる」

「うん。楽しみにしているよ」

「かっかっか。行けよ。早く。ハッシュはずっとお前の助けを待っているぜ」

 レイピッドが通信しておいたのだろうか。リフレインはトランジスタとの会話でヒントを得るどころか結論と指示を授かってしまった。

 スコルピオもハッシュもいつも通りに見える。たしかにうわの空な部分はあるがそう問題となるほどではない。

 二人が普通を装っているが、本当は助けが必要なほど苦しんでいると言うのか。トランジスタはそれをわかっていて、でも自分では力になれないからリフレインに頼んだのだろうか。

 どのみちハッシュと話をしたかった。スコルピオを慰める事をついでに頼もう。

 リフレインは施設の壁に触れてアクセスし、公開情報を調べる。そしてハッシュが今いる彼女の自室へと向かった。

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2014年08月25日

旋律のリフレイン(30)忍者の煙

旋律のリフレイン(30)忍者の煙

 リフレインはレイピッドと軽い運動、すなわち機能を使わない格闘戦を行いながら話をしていた。全身サイボーグは飲み食い出来ないため食事やお茶をしながら会話する習慣が無い。手持ち無沙汰なので、会話に影響しない程度の軽い格闘をたしなむ。

「トランジスタを倒した奴ってどんな?」

「倒したって言ったら彼女怒るよ。ちゃんと敵を倒して勝利したんだから」

「ごめん。あとで記録を見せてね」

「ええ。彼女は見られたくないだろうけど、希望者には記録を見せて共有する。それが決まりだからね」

「スコルピオが幹部たちと決めた掟。でも当のスコルピオは敗北のショックで閉じこもっちゃった」

「ちゃんと仕事はしているわよ。でも戦場への要請を断っているみたい。開発が追いつかないほど大勢殺されたからね。部隊を補充するまで戦場へは行けないんですって」

「スコルピオと話したの?」

「普通にね。みんなといつものように話しているわよ」

「いつものように、か」

 リフレインの突き出した拳を腕で受け止めレイピッドが反対の拳で突き返す。

 リフレインはそれをかわしきれず肩に食らい、衝撃で歯車が飛び散る。

「なあに? 軽い遊びでも本気でやらないと足しにならないわよ」

「ごめん。もっと身を入れるよ」

 リフレインは必死になる。上辺だけだ。それでもレイピッドは付き合う。

「もう以前のスコルピオじゃない。ハッシュもトランジスタもビーストも。みんないつもと同じように振る舞うけど、どこかうわの空だ。大破したトランジスタ以外はコストの関係で大幅な機体の改良を施せない。機体性能でなく、脳を鍛える事で強くならなくちゃならない」

「あんたの脳の具合はどうなの?」

「最近声が聞こえない。成長が順調に行っている証拠だと思う」

「間違いをしないからじゃないの? 以前のあんたはもっとじたばたして、間違いをするたび脳の声に警告されていたわ」

「じたばたしたり間違いを犯したりなんて、しない方がいいだろ」

「逆よ。あんたはみっともなくてもじたばたして間違いまくる方がらしいわ。始めの頃のあんたの方が、みっともなくて格好良かったわよ」

「みっともないなら格好悪いだろ」

「さーてね」

 レイピッドは交えた拳を離して後ろを向く。

「バイアスの記録を見て、スコルピオでもかなわない奴相手にどうすればいいかわからないんでしょ。そんなときは以前のあんたみたいに、脳の声に叱られてもいいからじたばたあがいてみなさいよ」

「そんなの格好悪いよ」

「あんたは格好悪くじたばたするのが格好いいの。何度も言わせないで」

「ん……ありがとうレイピッド。励ましてくれて。でもどうすればいいかわからないな。訓練を頑張るしかやる事無いんじゃないかな」

「あんたは触媒。みんなあんたに関わって変わったわ。強くなったよ。私も」

 レイピッドは照れくさいのか、向こうを向いたまま感謝の言葉を言いよどむ。

「とにかく、あんたはみんなと関わったからこそ自分も他人も強く出来たのよ。それが触媒。一人でくすぶってないでみんなと話してみなさいよ。会話のはずみで何か先へ進むヒントが見つかるかも知れないでしょ」

「うん……ありがとう。レイピッド。僕やってみるよ」

 リフレインもスコルピオの敗北以来意気消沈し、訓練にも身が入らない。大破しなかったおかげで機体は自己修復機能だけで十分元に戻せた。修理と部品の補充に伴う改造を施されない以上、自分の脳と訓練だけで強くならねばならない。

 強さの頂点たるスコルピオが破れ、このままこの道を進む事に迷いが生じた。リフレインの脳は男で機体は特殊だ。もっと改造を施し人間離れすればバイアスのように強くなれるかもしれない。それ以外の強さでは奴に勝てない気がした。

 だからむなしい。しかし打開しなくてはならない。リフレインはどうすればいいかわからない。レイピッドに言われた通り、みんなと取りあえず話して見る事にした。

 リフレインは別れ際にレイピッドから記録をもらう。広く明るい機械仕掛けの通路を歩く間にその記録を精査する。

「幹部のトランジスタを大破させた。辛勝だ。こんなに強い奴がいたなんて。バイアスは部隊の最高指揮官にもかかわらず己の戦闘だけに明け暮れる。スコルピオも同類だけど普段は自制し現場に出るなら指揮を取る。こいつは自分勝手な戦闘狂のバイアスの代わりに部隊の指揮を取る奴だろう」

 トランジスタとの戦闘。相手のスピードとパワーはすごい。しかもそれを巧みな体術により必殺技にまで昇華している。まるで忍者だ。全身サイボーグのリフレインをしてマンガに出てくる忍者と言わせるほど幻惑的で掴み所の無い戦いをする。

「正面衝突しかしないトランジスタの苦手な相手だ。よく勝てたなあ。信じられない」

 トランジスタの相手の全身サイボーグは見た目も忍者に見える。女のサイボーグ。ボディカラーは灰色。輝きをわざと抑えて隠密行動時に光を反射しない鈍い輝きだ。

「僕も鈍い輝きしかない。みんなのようにキラキラ輝いていないのがちょっぴり嫌だったけど、なるほど目立たないためには有効なのか」

 リフレインは感心する。記録から、敵から何かヒントを得られる予感に食い入るように頭の中の記録を見つめる。

「敵は煙使いだ。身体の各部から煙みたいな物を出している。灰色の煙。これを遠隔操作で操っているわけじゃない。こんな大量に細かい物を同時に操れるのは僕だけだ」

 自分ならただ煙を出すだけじゃない。歯車を細かく大量に飛ばしてまるで漆黒の煙のように出来る。しかもこの記録の敵と違い自由自在に操れる煙だ。

 記録を眺めると、敵は煙をそこら中に散布し煙幕の檻を造る。その煙はその場に漂い風程度では吹き飛ばされない。自動プログラムで拡散してもまた元の位置に戻ってくる。

「バイアスといいこいつといい敵を檻に捕らえるのが好きだな。どちらがどちらを参考にしたのやら」

 敵の灰色忍者は灰色の煙の中に身を隠す。トランジスタはきょろきょろし、煙を無茶苦茶に攻撃している。もちろん敵には当たらず、敵は煙から姿を出してはトランジスタの死角から攻撃して身体を削ってくる。忍者が逆手に持つ独特の短剣クナイに似た刃を手首から生やして攻撃している。

 全身サイボーグは武器を手に持つ事はしない。それだと握力を超える力を加えられたら落としてしまう。通常はこういうように、身体に搭載した武装にしてしまう。

「あの煙。サイボーグの知覚や探知機能を完全に遮蔽している。強力なジャミングプログラムだ」

 サイボーグの戦いは攻撃プログラムと防御プログラムのせめぎ合いだ。どちらが相手に対応しより強力なプログラムをその場で構築し敵に叩き込むか。その最たる例がスコルピオのサソリの尾だ。その毒と称される高度な攻撃プログラムは敵を分析し敵の防御プログラムの癖や実力を見抜きそれを上回る。天才であるスコルピオ以外が使ったとしてもあんなに有効ではない。

「完全に自動的なのにここまで強力なジャミングプログラムを構築しているなんて。トランジスタが何度攻撃プログラムを組み直して打ち込んでも分散出来ない」

 リフレインはじっと記録を見る。魅入られる。この敵はリフレインを魅了する。その戦い方が。

「こいつは煙に身を隠しながら、常に煙のプログラムを組み替えている。もちろんあれこれ変える時間なんてない。トランジスタの攻撃プログラムに対応する防御プログラムだけを構築し煙全部に伝播させている。それでぎりぎりトランジスタの攻撃を凌いでいるんだ」

 刹那の戦い。プログラム構築速度はどちらも素早い。複数のプログラムを悠長に組んでいる暇なんかない。

「すごい」

 大量の粒子で構築している煙の特性。トランジスタの攻撃を受けた箇所は破壊されている。しかしわずかな犠牲で得たデータを使い、あらかじて用意しておいたプログラムをそれに応じてわずかに調整している。そして最適な防御プログラムを構築する事で残りの攻撃プログラムを駆逐し煙全体が破壊されるのを防いでいる。

 煙状の主力武装。その特性としてプログラムが伝播する。トランジスタは煙のデータを精査し確実に全部を破壊出来る攻撃プログラムを構築し打ち込んでいる。伝播し煙は全滅するはずだった。

「煙は粒子、一部分が小さいゆえに搭載出来るプログラムのサイズも限られる。それを上回る攻撃プログラムを構築するのは容易であり、それを防ぐ防御プログラムをこんな小さなサイズで構築するのは難しい。僕の歯車と同じく、細かい部品は搭載出来るプログラムサイズが制限されるという弱点を持つ。だから僕は複数の歯車を組み合わせた巨大な歯車を構築し、十分なサイズのプログラムを搭載出来るようにしている」

 プログラムサイズの小ささをこうして克服しているなんて。攻撃のみならず防御にも使え、敵の伝播する攻撃プログラムでも全滅しない。

 リフレインはそんなとき、敵の攻撃プログラムを打ち込まれた部分を切り捨てる。プログラムを破壊され操れなくなった歯車を切り離して被害を最少とする。

 この忍者はそれを上回る。プログラムの伝播を防御プログラムの伝播に使っている。欠点を利点に変えたんだ。発想の転換、それを実現する実力。

「僕の脳はハイブリッドだ。こいつよりはるかに早く上手に最小の防御プログラムを構築出来るはずだ」

 プログラムの構築は得意分野ではない。それはスコルピオのような天才の領分だ。リフレインはある程度必要なプログラムを構築出来るのだからそれでいいと思っていたが、強くなるには苦手な分野を伸ばすのも有効だ。強くなる余地が大きい未知の分野だ。

「トランジスタはこの無敵の防御をどう突破してこいつを倒したんだ? 煙に隠れサイボーグの知覚機能に探知されない。死角から姿を現し軽い攻撃を加える。反撃される前にまた煙に姿を隠す。じわじわと時間をかければ確実に相手を弱め仕留められる」

 トランジスタはだんだんと身体の各部を削られボロボロだ。腹なんて削られすぎて大穴が開いている。

 記録の中でトランジスタが叫ぶ。

「ちまちまうぜえ奴だぜ。相性最悪。だから俺に挑んで来たのかあ? だがたしかに相性は最悪だったぜ。俺に相性の悪い相手じゃねえ。お前に相性の悪い相手が俺なんだよおおおおおおお」

 トランジスタは煙に飛び込み駆け回る。

 普通なら煙に包まれる。しかし煙ははるか遠くへ吹っ飛んでいく。トランジスタは残った煙を追うように駆け回り飛び跳ね、煙をほとんど吹き飛ばしてしまった。

 灰色の忍者が煙をはがれて姿を見せる。明らかに狼狽している。

「かっかっか。煙を遠くまで吹き飛ばす攻撃プログラムの構築が難しくてなあ。おかげでボロボロだあ。誰のせいだ。ああん?」

 姿を見せればいかにそのパワー、スピードそして体術が優れていても、格闘が得意なトランジスタの敵ではなかった。

 相手の得意なフィールドから自分の得意なフィールドに書き換えた。これが自分の次元に敵を引きずり込むと言う事か。相手の得意なフィールドを覆すなんて難しい。しかし勝つためにはそれを成すしかない。

 忍者は凄まじい速度で両手の手首に生えた刃を繰り出す。しかしほとんど破壊され腹は半分しか残っておらず左腕はすでに失っていたトランジスタは、右腕の一閃だけで敵の両手を切断する。

「げっ?」

 敵が驚く。トランジスタは敵の忍者の首を右手で掴み、めしめしと装甲を破壊していく。

「俺の攻撃は圧縮と圧力だ。知っているだろ。攻撃する部位に圧力を発生させて敵の装甲をひしゃげさせ破壊する。最大出力で打ち込めば一瞬だが今お前の両手を一度に吹っ飛ばしたみたいに切断出来る。しかし俺の攻撃力は一つの部位による圧力より二つの部位が引きつけ合う圧縮の方が強いんだよ。てめえの首は俺の手に捕まれた。身体とバイバイの挨拶をしておきな」

 言うが早いかトランジスタの手が敵の首を握り潰して切断する。そして身体を殴って吹っ飛ばすと、残った首を手で握る。

 目の上に手をかぶせる様に頭を握られた。頑丈なヘルムでさえトランジスタの指と指が特殊な電磁力で引き合う圧縮、必殺技のプレスにはかなわない。

 死を悟った敵の忍者は最後に説明を求める。

「我が煙は吹き飛んでもまた元に戻って構築し直すようプログラムしてある。どうして貴様に触れた途端吹き飛んだのだ」

「てめえは煙を伝播させどんな攻撃プログラムをも制圧する。だから煙が元に戻るという自動プログラムを破壊出来ない。そんなもん破壊してねえよ。俺が構築したのは自分の身体に走る攻撃プログラムだ。普通は攻撃部位にしか発生出来ない圧力を全身の多数の部位から発生出来るよう攻撃プログラムを構築した。苦労したぜ。普通は威力が低くなり過ぎて使い物にならねえ。十分な威力と数をプログラムにするのに手間どっちまった」

「十分な威力だと? 全身の多数の部位に圧力を発生させればその威力はたかが知れている」

「だからだよ。てめえの煙の弱点だ。破壊されないように衝撃に対し吹っ飛び衝撃を殺すように出来ている。ようするに軽いんだな。抵抗が軽く、少しの力ですぐ拡散し逃げ出しやがる。だからその煙が戻って来るのに時間がかかるほど遠くまで吹き飛ばす攻撃プログラムで十分なのさ。お前本体にかけても風が吹く程度にしか感じない弱い圧力。でも軽くて小さく踏みとどまれない煙を遠くへ吹き飛ばすには十分。それがお前の煙の弱点だ」

 リフレインは耳が痛い。これはきっと、リフレインがあとで記録を見る事を意識して解説している。細かい歯車に分解して衝撃を逃がすという事は、歯車がその場にとどまれないという事だ。身体全体を破壊され分解を余儀なくされると途端にリフレインは無力化する。

 細かい歯車に分解するなら、その小さく弱い歯車を吹き飛ばされ使えなくされる弱点を克服しないといけない。この忍者はそれを防御プログラムの構築と伝播により克服したように見えたが、プログラムが通用しないなら単純に煙の軽さを突いて遠くへ吹き飛ばしてしまえばいいのだ。

 戻ってくる自動プログラムは破壊出来ない。しかし戻ってくる前にけりをつければ関係無い。遠くへ吹き飛ばして戻ってくるまでの時間を稼げればそれでいい。

「くっ……」

 忍者は首だけで観念する。トランジスタは相手が敗因に納得したのを見た上で頭を握り潰した。

「おおああああああ」

 忍者が苦しむ。舌を突き出し苦悶する。

 まさか。激しい戦闘を行う全身サイボーグの脳は痛覚をカットされている。それでも痛みを感じるのか。いや、脳が握り潰される恐怖に怯えその痛みを想像してしまう。

 トランジスタの必殺技、圧縮によるプレスは破壊力が極めて高い。硬いヘルムを紙のようにひねり潰したあと、その中にあるさらに硬いシェルすら変形させていく。

 普通シェルの破壊は容易ではない。それを破壊する機能を持ってしても破壊には数分かかる。しかしトランジスタのプレスにかかればその圧力により中の脳が気絶する。自動プログラムにより動くとはいえ脳波の存在が必要な煙はもう戻って来られない。

 最硬の防御を誇るシェルでさえひしゃげて割れ、隙間から培養液と血と脳漿が搾り出される。

「はははっ、脳のフレッシュジュースだぜ」

 レモンを手で握って搾るように敵のシェルを搾って血のジュースを乾いた大地に滴らせたあと、トランジスタはそれを投げ捨て地面に横たわった。

「あー……もう動けねえ。俺はまだまだだな。プログラムの構築は苦手だぜ。おかげでここまで破壊されるほど時間がかかっちまった」

 トランジスタは残った右腕を上げて回す。レイピッドを通信で呼んでいるのだろう。自分ではもう動けないらしい。

 リフレインは記録の再生を切ってため息をつく。

「はあ。すごい戦いだった。しかしかなり学べた。僕の可能性とその弱点を」

 記録の忍者の煙と自分の細かい歯車の群れ。煙のような銀河のような流れ。奔流。ただよえば煙や雲に。流れれば銀河や奔流になる。

 応用も、弱点も、利点も、そして工夫の余地も無限大だ。リフレインは大きな可能性を秘めている。今行き詰まっているのは脳の発想が狭いだけなのだ。彼の強くなる余地はまだまだ広大。開拓したのはそのわずか一画にしか過ぎない。

「僕はまだまだ強くなれる。そして敵はその強さの弱点を突いてくる。その弱点を克服し、敵を上回る術すら用意しなくてはならない」

 リフレインは元気が出る。強くなる道が行き詰まったと思っていた。でもそれは、自分で造った行き止まりにしか過ぎなかった。行き詰まりなんてあり得ない。道はまだまだ続いて果ては見えないのだから。

 リフレインは力強く駆け出す。そしてヒントと教えをくれたトランジスタの力になりに、彼女の元へ急いだ。

posted by 二角レンチ at 21:25| 旋律のリフレイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年08月24日

旋律のリフレイン(29)重苦しい帰還

旋律のリフレイン(29)重苦しい帰還

 ビーストとスコルピオが記録したデータを何度精査しても、相変わらずため息が出てしまう。

「はあ。圧倒的だね。何度見ても大迫力の映像だ」

 リフレインは自分の頭の中で、写し取った記録を反芻する。

 ハッシュがバックアップについていたとはいえ、手出しはしなかった。リフレインは戦場で存分に力を発揮し、途中何度かピンチはあったがそれでも期待通りの成果を上げた。

 敵の全身サイボーグは全滅した。こっちの被害も相当だが、リフレインや幹部たちが強くなった分被害は抑えられた方だろう。

 意気揚々と輸送機まで凱旋したリフレインは、座席に座り肩をすくめ手を組んで顎の前に置き、祈るようにうつろな目でぶつぶつつぶやくスコルピオを見てびっくりした。

「スコルピオ? どうしたの?」

 リフレインの問いにも反応しない。隣に座るビーストが首を振る。

 敗北した事を悟る。まさか。あの最強のスコルピオが負けるなんて。バイアスはまだ生きているという事か。

 リフレインは何か言おうとして目でビーストに制止される。だから何も言えなかった。

 こんなに自信の無いスコルピオは初めて見る。いつも冷静沈着無表情。自信に満ちあふれて揺るぎ無い。見ているだけで頼もしさを覚えるあこがれ。

 それがどうだ。こんな小物のように、いじけてぶつぶつ言う姿。こんなの見たくなかった。スコルピオは神なんかじゃない。その神々しさはまったく失われて地に堕ちた。

 リフレインは、スコルピオの隣で彼女を慰めるビーストのさらに隣に座る。

「ビースト。無事だったんだね。よかった」

「ええ。スコルピオが限界を見極め戦闘を止めてくれたのよ。おかげで殺されるまで戦わずに済んだわ」

 リフレインは迷ったが、彼女の無事を祝って彼女の手を握った。彼女はちょっと驚いたがすぐににっこりすると、その手をぎゅっと握り返した。

 うつむいて話す二人をハッシュはわざわざ反対の席に座って眺めた。

「バイアスはどうなったの?」

「生きているわ。でも奴も必死だった。生き延びるために死に物狂いだった。スコルピオは奴を倒す寸前まで追い込んだのよ」

「へえ……でも負けたんだろ?」

 リフレインはいつまでも、スコルピオに無敗の王者でいてほしかった。あこがれ目指した頂点なのだ。それが敗北してしょげかえって、自分と同じ小物だと知ったときの落胆のせいでけなさずにはいられなかった。

 ビーストはリフレインの手を両手で握り、顔を向けさせ訴える。

「私がバイアスの力を引き出せずに負けたのが悪いのよ。あいつが全身から馬の脚を生やせる機能を追加していたなんて、知っていればきっと、スコルピオはそれに対処出来て勝利していたわ」

「仮定より結果が大事だよ。そうだろ?」

「リフレイン……」

 これ以上言っても逆効果だ。隣で聞こえていない振りをしているスコルピオにだって聞こえている。これ以上彼女を傷つけたくない。

「帰ったら映像の記録をコピーしてあげる。私とスコルピオ両方のね。それを見ればわかるわ。スコルピオがいかに強く、今でも尊敬に値するかを」

「今見せてよ。輸送の間、時間はあるんだからさ」

「今は……スコルピオをそっとしておいて」

「ふん。ところでさ、僕は今日全勝。強い奴にも勝ったんだよ。三十六体も敵の全身サイボーグを殺した。シェルを取り出しハッシュに全部潰してもらった。特に強かったのはやっぱりイグニッションだね。両腕の側面に身体よりもでかいタイヤをつけて疾走するんだ。生前はレーサーだったらしくてその運転技術は神業だったよ」

「へえ」

 リフレインは少年らしく、自分の勝利に興奮していた。いつもならハッシュに自慢話をしてほめてもらうのだが、今日はビーストにほめて欲しかった。

 ビーストは生前子を持つ母だった。だから子供が自慢話を聞かせたがる事や、それをほめて欲しがる事を知っている。ビーストは辛抱強くリフレインの話に付き合いちゃんとほめてあげた。

 戦場で戦っていた最後の全身サイボーグが帰還し、輸送機は飛行を開始した。

「これだけ?」

 来たときはぎゅうぎゅう詰めだったのに帰りは寂しいものだ。来たときの十分の一ぐらいしかいない。それだけ戦死したという事だ。

 リフレインは周りを見る。トランジスタは大破し動けない。それをボロボロのレイピッドが支え介抱している。

 二人はリフレインに話しかけなかった。それどころではなくそんな場合でも無い。トランジスタは自分の損害以上に、しょげているスコルピオの姿を見てうちのめされていた。

 かつてスコルピオを倒すべき目標として目指した同士だ。リフレインと同じくトランジスタにとってもスコルピオの敗北は目標を失う衝撃だった。

 暗い雰囲気。もうリフレインも口をつぐんでいる。ハッシュは立ち上がりぱんぱんと手を叩いた。

「敵の全身サイボーグは全滅したわ。任務は成功。私たちは部隊よ。部隊の勝利は個々の勝利よりも大事。そうでしょう。みんな顔を上げなさい。私たち全員の勝利だわ」

 ハッシュは無理してみんなを鼓舞する。口では言わなくてもみんな、スコルピオの敗北でうちひしがれていた。みんなを元気づけるためにあえて、ハッシュは個々の勝利や敗北は重要ではないと宣言したのだ。

 生きて帰る事は勝敗よりも重要だ。そう言うのはいつもスコルピオの役目だったが今回は無理だった。だからハッシュが代表して言った。

 ハッシュはむなしかった。神のごとく崇めた勝利の女神が破れたのだ。彼女の信仰心が揺らぐ。しかしこんなときこそビーストを見習って弱ったスコルピオを励まさねばならないのだ。

 地下施設への帰還を果たし、落ち着いたスコルピオは記録のコピーを取らせみんなに公開した。自分の無様な敗北などみんなに知られたくないが、戦闘の記録はみんなで共有する決まりだった。

 リフレインはその記録を見て、自分がいかに愚かだったかを知る。バイアスは想像以上の化け物になっていた。これに敗北など当たり前。生き残れた方が奇跡だろう。

 自分が敗北したスコルピオを軽蔑した事をひどく恥じた。気持ちの整理はつかない。でもスコルピオは立派な人だ。再び尊敬しなくてはいけない。

「これに、勝たなくちゃいけないのか? スコルピオでも勝てないのに、僕なんて」

 それでもやるしかない。これが、リフレインのみならず他のみんなも巻き込む危機だったのだろうか? 頭の中の声は答えない。

 でもこの戦争ではもうリフレインたちの出番は無い。戦争は間もなくこの国の敗北で終結する。敵の全身サイボーグたちを皆殺しにしたのは一矢報いるためであり、他の戦場へ行かせないためだ、

 劣勢の戦況は覆らなかった。すでに敵の全身サイボーグに、こちらの部分サイボーグや生身の兵士が殺され過ぎてしまっていた。

「戦争なんて、全身サイボーグだけでやればいいんだ。弱者の群が戦争の勝敗を決するなんておかしいよ。弱いくせに」

 リフレインはやりきれない想いを戦争の矛盾にぶつけた。もちろん誰もがおかしいと思っていても、国のトップが決めた戦争には逆らえない。

 他の戦場にも投入され、いずれはバイアスともまみえるだろう。今度はもう生き延びられないだろう。きっと全員殺される。

「怖い……殺されたときより怖い」

 スコルピオがかなわない敵に勝てるわけがない。リフレインは腕で身体を抱えるようにして背を曲げいすに座りながら恐怖に震えた。

posted by 二角レンチ at 21:22| 旋律のリフレイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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