2015年02月14日

ドルイド少女ワンカナ(0)あらすじと人物紹介

ドルイド少女ワンカナ(0)あらすじと人物紹介

あらすじ

 魔物の巣食う森の奥深くにある小さな村。その村では毎年十八歳の男女それぞれの強さを競う大会が開かれていた。

 ワンカナは元気一杯の明るい女の子。童顔で幼児体型、そして男の子っぽい口調なのでみんなからは子供扱いされていた。しかしとても強く、十八歳の女の大会で見事優勝してみせた。

 自然の力を借りて植物を操る魔術を使うドルイドの魔術師。この村では全員ドルイドとして力を鍛え、強さこそが全てだった。

 ワンカナはドルイドの魔術師としてとても強い。女どころか男や年上の村人たちの誰よりも強いと自負していた。しかし男尊女卑のこの村では、いくら強くても女は男より下の存在だった。

 十八歳の強さを競う大会で、男女の上位の者から順に結婚相手となる。強い男の子供を産むのが女の幸せ。ワンカナはその習わしの中で育ったのでそれについて不満はない。

 しかし、男の大会で優勝したのは村長の末の息子だ。ワンカナの夫となるその男ギンギラは、強さではなく村長の息子だという理由で勝ちを譲られ優勝した。十八歳の男の中で一番強い男ではない。そんな男と結婚し子供を産まねばならないのがワンカナはとても不満だったが、村のしきたりには従うしかなかった。

 嫌だ。でもわがままは言えない。ワンカナはそう諦めていた。そこへ転機が訪れた。

 強い魔物が住む森の中にあるこの村は、魔物に脅かされながらも魔物の棲む森が外の世界の干渉を遮り守ってくれていた。魔物と村人は弱肉強食の中で共存していた。

 強いドルイドである村人たちでも森を抜けるのは命懸けだ。よほどの事が無い限りしない。外界との交流を望まないこの村には、ワンカナが生まれてから今まで魔物の森を通り抜けて訪れる者などいなかった。

 なのに訪れる者がいた。来訪者は三人。魔術師のパーティだった。

 世界最強の魔術師とされるパラディン。若く美しい青年アキハイトは魔術武装である白銀の甲冑を身にまとい、パラディンとして強い魔術師を仲間に加えるために来たと言う。

 村の外では戦争が起ころうとしている。十年前に出現した、人に化けられる強大な魔物である魔王との決戦の日が近づいているのだ。

 アキハイトと共に訪れた二人の仲間は、幻惑の魔術を使うソーサラーの大男ベイドと、その恋人であり大規模破壊魔術に特化したメイジである細身の女性ラズリ。

 二人はとても凶悪だが強い。森の魔物は大した事ないのにそれを狩るのに苦労する村人たちは弱いとあざ笑い、仲間にするほど強い奴なんていなくて無駄骨だったと言う。アキハイトも同意し仲間を探さず帰ろうとする。

 この村では強さが全てだ。強さを侮辱されるのは許せない。森の魔物たちを難なく倒して森を通ってきたアキハイトたちの強さに村人たちが恐れ何も言えない中、ワンカナだけは毅然と文句をつける。

 ワンカナは誰よりも強い自信がある。村人たちや森の魔物よりもはるかに。それは誰にも隠していた力、秘密の魔術を持つからだ。

 ワンカナは自分の強さを示し、村人たちの強さを侮辱した事を謝らせようとする。アキハイトはその挑戦を受け、せっかくここまで来たのだからとワンカナの強さを試すために一騎打ちをする。

 村人たちが見守る中、ワンカナとアキハイトの決闘が行われる。ワンカナは村人たちを怖がらせないため今まで秘密にしていた力を解放する。

 樹木の巨人。多数の樹木をねじり編み上げ作り出す見上げる巨人はまるで魔物だ。こんなドルイド魔術は誰も知らない。村人たちは初めて見るその魔術に恐れおののく。

 ワンカナはいい気になって自分の強さを見せびらかす。それが村人たちをどれほど畏れさせ、その結果がどんな不幸をもたらすかを知りもせずに。

 神の加護を受け神の力を行使する、世界に五人しかいないパラディン。神に仕えるアキハイトは神でない樹木の巨人の雄大さに畏れを抱く事をよしとせず、圧倒されながらも白銀の剣を掲げ果敢に立ち向かう。

説明

 巨大な魔物、強い魔術師、そして魔王と勇者の戦いを描く王道ファンタジーです。ただ、勇者の称号は魔王を倒した暁に贈られるものなので厳密にはアキハイトは勇者ではありませんが。

 元気いっぱいの少女ワンカナと、寡黙で無表情なアキハイト。二人を中心にへらへらと人を見下し軽々いなす食えない男ベイドと、性格がとてもきつくて、自分が世界最強とうぬぼれるラズリ。四人のパーティがどう魔王に立ち向かうのか。

 背負った物、勝利と敗北、苦難と修行、恋と愛。仲良しこよしではなく、強くなるためなら仲間を傷つけてでも厳しく諭し鍛え合う本当の仲間たち。魔物との死闘の連続となる彼ら彼女らの冒険をどうぞお楽しみください。

 以下人物紹介です。多くのキャラにはイメージラフがついています。小説を読む際キャラのイメージを絵で見ても大丈夫な方のみごらんください。

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posted by 二角レンチ at 23:31| ドルイド少女ワンカナ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年02月15日

ドルイド少女ワンカナ(1)ワンカナ

ドルイド少女ワンカナ(1)ワンカナ

 小柄な少女の手から、淡くみずみずしい緑の蔦が何本もよじれながら伸びる。その蔦はまるで動物のように生き生きと躍動し、逃げる女を取り囲むようにして広がる。

「ひいいいいっ」

 若い女が襲い来る蔦に包まれ締め付けられる。細い蔦はその細い見た目からは想像出来ないほど強い力で捕らえた女を持ち上げる。

「うぐううっ、このっ」

 蔦に腕ごと身体を締め付けられ若い女が苦しむ。しかしまだ蔦に絡め取られていない掌を広げると、はるか下の地上にいる少女に向ける。

 女の広げた掌から大きな椰子の実がごもりと生み出される。それはまるで砲弾のように勢い良く撃ち出され、地上の少女めがけて飛んで行く。

 少女はにんまり笑う。とても愛嬌のある、いたずらっぽい子供のように無垢な笑顔。豊かでふわっと広がる首の所までしかない短めの髪と合わさって、少女は年齢よりも大分幼い子供に見える。

 しかし、この戦っている女性は二人とも同じ歳だ。十八歳。とても同じ歳とは思えないほど下にいる短い髪の少女は幼く見えるが、童顔で胸も小さい幼児体型なだけで立派な大人だった。

 少女は右手から蔦の束を出して若い女を縛り、上空に吊り上げている。空いている左手を広げて上に突き出すと、その手から真っ赤な花びらがあふれるように出てくる。

 大きな赤い花を左の掌に咲かせた少女は、その花で飛んでくる椰子の実の砲弾を受け止める。赤く薄い花びらが、椰子の実を受け止めた途端花びらを丸めて包み込み、そのまま包んだ椰子の実ごと縮小し消滅するように少女の左手に吸い込まれ消えてしまった。

「くううううっ」

 最後の反撃をやすやすと防がれ、蔦で身体を締め付けられた若い女は苦しみに歯を食いしばりながら泡を口の端から漏らし、がくりとうなだれた。

「そこまで。勝者ワンカナ」

 長い髭を垂らした老人が手を挙げて宣言する。周りで見ていた観衆からわっと歓声が巻き起こり、続いて盛大な拍手が鳴り響いた。

「えへへっ、ありがと。みんなありがとー!」

 ワンカナと呼ばれた勝者、短く豊かな髪の少女が拍手に応えて手を振り、周りを見回すようにぐるぐるみんなの方を向く。

 深い森の中にある、下草だけが生えた広い場所。この拓けた広場はこの森に住む部族が決闘や集会に使う場所だ。

 ワンカナも、離れて決闘を観戦していた村人たちもみんな獣の皮をなめした服を着ている。男は腰のみ隠し、女はそれに加えて帯状の皮で胸を隠している。そして裸足だった。

 深い森に住み、鋼や技術による加工品を嫌う部族。外界との交流はほとんど無く、たいていの村人はこの村を出た事が無い。

 科学よりも魔術が発展したこの世界では、科学技術よりも魔術により何かを成す事の方が容易で自然だ。だから科学はあまり発展せず、主に魔術が進歩した。

 それでも、服や器、馬車やナイフや剣くらいは製造される。魔術の方がそれよりはるかに優れるが、強力な魔術師は人間の中でも特に優れたわずかな数しかいない。魔術を使えない多くの一般人は、科学により製造された道具や武器を使う。

 それに対し、そういう科学を一切否定し魔術のみにより暮らす部族もいる。ワンカナの部族もその一つだ。科学に頼り大きな町に住む一般人たちは、自分たちより魔術に優れ科学を否定する部族を未開人だの原始人だのといって蔑んでいた。

 弱い連中にいくら蔑まれてもやっかみでしかない。ましてやそういう連中に関わらないように森や洞窟などに住む魔術のみに頼る部族たちは、科学に頼る弱い連中をやはり見下し蔑んでいた。

 魔術にのみ頼る部族たちと科学で補う市民たちは相入れない。ほとんど交流しないし必要も無い。

 科学を否定し魔術にのみ頼る部族は、総じて魔術師となる。魔術が弱いほど立場が弱く、魔術が強いほど立場も強くなる。単純明快で道理がすっきりしている。ワンカナはあまり賢くないので、魔術の力だけで他人より優れられる事に得意になっていた。

 村で一番強い者を決める大会。毎年十八歳になった者を集めて行われ、男同士、女同士で決闘をしてその歳の一番の男女を決める。

 その大会の決勝で、ワンカナは見事優勝した。決勝戦だというのにワンカナと相手の若い女との力の差は歴然で、ワンカナの敵ではなかった。

 この部族は魔術のみに頼る部族の特徴として、ただ一種類の魔術のみを伝承し鍛える。他の魔術の修得は許されない。

 ワンカナの部族は植物を操るドルイド魔術を使う。魔術名がそのまま魔術師の称号となる。称号はクラスと呼ばれ、ドルイド魔術を使うワンカナのクラスはドルイドだ。

 十八歳になったときにその歳の最強の男女を決める大会。これは同時に、結婚相手を決める大会でもある。

 魔術とその強さを基準として立場が決まるこの部族では、強い男女の順に結婚相手が決まる。この大会の後の宴は多くの夫婦が生まれるお祝いとなる。十八歳になった男女はこの大会の順位が同じ相手と結婚し、今夜宴の後で初夜を迎える事になる。

 それまでは童貞であり処女である事、純潔が求められている。ワンカナはもちろん部族の掟に従いまだ処女のままだった。

 女性の大会で優勝したワンカナは、みんなの歓声やお祝いの言葉に大喜びで応えあちこち向いては両手をぶんぶん振る。ワンカナは童顔で言動も同じ歳の子たちと比べて幼い。元気で幼稚で馬鹿の典型だった。

 みんなに子供っぽいとからかわれ馬鹿にされてはいたが慕われていた。年下の子たちと同じレベルで遊んでくれるいいお姉さんでもある。ワンカナは群を抜いて魔術が強いし明るい性格もあって、みんなに馬鹿にされながらも尊敬されている人気者だった。

 みんなに応えて大喜びで飛び跳ねたり両手を振ったりしているワンカナに、群衆から出てきた男が一人近づいてくる。

「やったなワンカナ。おめでとう。やっぱお前強いな。他の女なんか目じゃねえや」

「ギンギラ」

 ワンカナはその若い男の方を向く。ワンカナは笑顔のままだがちょっと元気が減っていた。

 ギンギラと呼ばれた男はたくましい。顔もいい若い男だ。この十八歳の中で最強を決める大会の、男たちの中で優勝した者だ。

 つまり、女の大会で優勝したワンカナの夫となる。十八歳の中で一番強い男だった。

 この部族はしきたりとして、十八歳になった者同士が戦う大会で強かった順に結婚相手を決める。ワンカナはそれについて不満は無い。みんなそうだしそれ以外の結婚方法を知らない。この部族では恋愛という概念が存在しなかった。

 ワンカナは、村で一番強い男と結婚出来るのならうれしい。自分が女の中で一番強く、それより強い魔術師である男の中の一番は尊敬出来、妻にしてもらえる事は最大の誉れだった。

 しかしワンカナはうれしくなかった。無理に笑顔を作ってはいるが、内心では喜べなかった。

 なぜなら。ギンギラは族長の息子だったからだ。

 一夫一妻のこの村では、族長とその子供だけは妻や夫以外の妾を囲える事になっている。同じく、公然の秘密として彼らだけは十八歳まで純潔を守る事無くすでに男女の交わりを年上の未亡人から手ほどきされている。

 族長の子供たちが優遇されるのはそれだけではない。十八歳の男女の中でそれぞれの最強を決めるこの大会。不正や手加減は許されないこの大会において、族長の子供たちだけは優勝が約束されている。

 もちろん誰も強制していないし口にもしない。しかし族長の子供が大会に出る場合は勝ちを譲って優勝させるのが暗黙の習わしだ。男でも女でも、族長の子供が大会に出るときは必ず彼らが優勝し、他の者たちはわざと負ける。

 魔術師としての強さが一番重要なこの部族において、族長の息子というだけでギンギラは優勝した。魔術師としての強さではなく他の男たちが勝ちを譲っただけなのだ。

 だからワンカナは不満だった。最強の男と女が夫婦となり一番強い子を産む。それがこの部族の女全員の夢でありあこがれ。なのにワンカナは同じ歳に族長の息子がいたというだけで、村で一番強い男ではなく勝ちを譲ってもらった弱い男と契り弱い子を産まねばならない。

 そんなの嫌だった。でも村のしきたりには逆らえない。誰に言ってもたしなめられるだけなのでワンカナはもう不満を言うのをやめて運命に殉じる事にしていた。

(つまんないや。僕、強くてあこがれ尊敬出来る、本当に強い男の子供を産みたい)

 自分は魔術師として研鑽し、村の女の中で一番強くなったのに。十八歳の中で一番強いだけではない。ワンカナはもっと年上の熟練した魔術師の男女全員よりも強いと自負していたし、他人も口には出さないがそれを認めていた。

 ワンカナは間違いなくこの村で一番強い。一番無邪気で馬鹿ゆえ他の何にも惑わされず、魔術師として強くなる事を存分に楽しみおかげで思い切り努力出来た。才能もあったのだろう。もしかしたらこの部族の長い歴史の中でも一番の強者かもしれないぐらいずば抜けていた。

 だから不満と失望が大きいのだ。村で最強の男と結ばれればきっと村の歴史の中で最強の子供が産まれる。ワンカナはそれが夢だった。より強い子を産む事がこの村の女にとって一番の幸せなのだ。なのにギンギラ程度の男の子供を産まねばならない。

 男の大会では、明らかにギンギラより強い者が少なくとも三人はいた。でもみんなギンギラと戦うと、必死に戦っている振りをしながら最後はあっさり降参した。誰が見ても八百長だが、形だけは接戦を演じてギンギラは立派に戦ったとされた。

(我慢しないと。ギンギラは僕の夫になるんだから。こいつの子供を我慢して産まないといけないんだから。笑顔でいなくちゃ)

 ワンカナはギンギラに笑顔を向ける。ギンギラも笑顔で返す。

「ワンカナが勝ってよかったよ。まあお前が負ける所なんか想像出来ないけどな」

「うん。僕強いからね」

 ギンギラはその皮肉にまるで気付かないかのようだ。しかし言葉でやり返す。

「これで美人だったらなあ。お前はかわいいけどどうしてそんなに子供っぽいんだ? 顔も身体もお子さまじゃないか。本当に俺と同じ十八歳か?」

 ギンギラはワンカナの小さな胸を指さす。ワンカナはぴくぴくと額に血管を浮かせながらも笑顔で耐える。

「好きでこんなんじゃないよ。僕ちょっと童顔なだけだよ」

「ちょっとじゃないだろ。はーあ。他の女は胸もお尻も大きいのになあ。まあいいや。俺は族長の息子の一人だからな。妻は一人だが妾を囲う事を許されている。旦那が戦死した若い未亡人どもはいいぞお。大人の色気だ。すげえ気持ちいい。お前まだ交わりの気持ちよさを知らないだろ。すっげえんだぜ。お前は強い。だから強い子を産んでくれればそれでいい。お前に女の色気や気持ちよさは期待してねえよ。よかったな。強さだけでも取り柄があって。でなきゃお前みたいなガキ、誰も抱かねえぜ」

 ワンカナはぶるぶる震える。彼女は明るくたいていの事は許せるが、強さを侮辱されるのだけは許せない。自分の唯一の誇りなのだ。それを強い子を産む役にしか立たないみたいに言われて我慢出来なかった。

「ギンギラ……」

 自分を抑えないといけない。男尊女卑が強いこの村で、ましてや夫になる男に手を上げるなど許されない。そんな事をすれば厳しい処罰が待っている。

 この村での罰と言えば陵辱刑だ。罪の重さに応じた人数の異性に犯される。族長の子以外は一夫一妻で妾を囲めない。陵辱刑は妻や夫以外の異性と交われる唯一の機会であり、それを執行する男女は嬉々として罪人を犯す。

 処女のワンカナが複数の男に強姦されるのは普通なら耐えられない苦痛だ。しかしワンカナはさして怖いと思っていない。魔術を使って魔物狩りをする方がよっぽど怖いし痛い思いもたくさんした。死にかけの重傷を負った事だって何度もある。処女が初めて男と交わるときはとても痛くて血が出るそうだが、戦いのけがの方がよほど痛くて血もたくさん出る。多くの女は初夜を怖がるが、ワンカナは初夜どころか陵辱刑だってそれほど怖がってはいなかった。

 だから恐怖より怒りが勝る。ワンカナはたいていの事は笑って許せるが、一度怒ると手がつけられない。だから我慢しないといけないのに。ワンカナはやはりギンギラのような弱い男に馬鹿にされ子を産む道具扱いされる侮辱に耐えられなかった。

「何だワンカナその目は? おい、それが夫になる男に向ける目か?」

 ギンギラは背の低いワンカナを見下ろしている。口では勇ましく立ち向かっているようだが顔がひきつり一歩後ずさる。ワンカナの怒りに燃える目に睨まれ、魔術師として彼女よりはるかに弱いギンギラは明らかに怯えている。

「ギンギラ。僕はこの村で一番強いんだよ。女や十八歳だけじゃない。男や年上の誰と戦っても勝てる自信があるよ。そんなに強い僕が、どうして、君みたいに弱い奴の子を産まないといけないんだよ。今日の大会でも、君よりロンロクやバンバイの方が明らかに強かったのにわざと負けて。僕、あの二人のどっちかの子を産みたい」

 ワンカナとギンギラは広場の中央で話している。他の群衆は離れているので会話が聞こえない。でもワンカナがギンギラを睨み上げながら何か話し、ギンギラは怯えたように後ずさるので、みんな歓声をひそめ何事かと見守った。

「ワンカナお前。この大会で強かった順に夫婦を決めるのは村のしきたりだ。いくら強くても村のしきたり、古くからの掟に逆らうなんて許されないんだぞ」

「掟とか何とか言ってないでさあ、僕を力付くで黙らせてごらんよ。出来るの? ほらあ。男の方が女より強い。男の大会で優勝した君は女の大会で優勝した僕よりも強いはずだろ」

「ふざけるなよ。この村で女が男に逆らう事は許されない。妻が夫に逆らう事は許されない。親父に言ってお前を処罰してもらう。処女のくせに陵辱刑だ。村中の、十八歳以上の大人の男全員に犯させてやる。どうだ怖いだろう。女の初めてはそりゃあとても痛いらしいぞ。びびれよほらあ。謝れよほらあ」

 ギンギラはワンカナに怯えているくせに、強がってワンカナの肩を掌でどんと突く。魔術を支える土台である肉体は魔術が強いほど強靱となる。ワンカナはギンギラごときに突かれてもびくともしなかった。

 ワンカナはぶるぶる震える。うつむいて歯を食いしばる。

 ワンカナはこの村も、村のみんなも大好きだ。この村で生まれ育ち、ここと周りの森の中しか知らない。森に住む魔物を狩りに行くときもよその人間には会わない。魔物の住む恐ろしい森はこの村を脅かすと同時に、外の世界の人間たちに干渉されないための障壁ともなっている。

 この村や、村のみんなを裏切れない。掟やしきたりの大事さも尊さも幼い頃から何度も教えられた。みんな笑顔で暮らしている。村を脅かす魔物を狩り、それを食料としているこの村では魔物と戦って死ぬ者も多い。でもみんなそれを受け入れ懸命に生きている。

 弱い奴の妻となり子を産まされる。それぐらい我慢しなくてどうする。村のみんなが先祖代々しきたりを尊び掟を厳守してきたおかげでみんな生きてこられたのだ。ワンカナだって村のみんながいたから生きてこられた。一人ではいくら強くても、一人では勝てない強い魔物や多数の群れにとっくに食い殺されている。

 ギンギラだって子供の頃はもっとましで、生意気だが憎めない友達だった。大人になるにつれ族長の子にだけ許された特権に浸り、それを鼻にかけだんだん嫌な奴になっていった。とくに、十八歳で結婚する前に特例として年上の未亡人数人を囲い交わりの手ほどきを受けるようになってからは、処女や童貞の友達みんなを見下し馬鹿にするようになってしまった。

 いい掟も悪い掟も全部掟だ。どれが欠けてもよくない。どれを否定するのもよくない。みんなが掟に従ってきたからみんな生きてこられたのだ。魔物の住む恐ろしい森の中で全滅する事無く細々と助け合い生きてきたのだ。

 ワンカナはぶるぶる震え涙を浮かべる。食いしばった歯や握りしめた拳からは血が染み出している。それでも、抑えきれない怒りを強い意志でねじ伏せこの村のみんなのために掟に殉じる事にした。

「……ごめんギンギラ。僕、女の大会で優勝してちょっといい気になっていた。うぬぼれすぎていたんだ。本当にごめん。男は女より強い。女より偉い。なのに生意気言ってごめんなさい。僕、いい妻になるよ。処女はやっぱり夫である君に奪って欲しい。だからどうか、陵辱刑だけは勘弁してもらえないかな」

 ギンギラは、強いせいで強気で生意気で自分に従わないワンカナがしおらしく従順な言葉を吐いたので、怯えた顔から一転、にかっと笑った。

「は、ははっ、そうだ。わかったかワンカナ。俺は族長の息子だぞ。親父に言えばお前を陵辱刑にするなんて造作もない。女なんだからそりゃあ怖いよなあ。男たちに乱暴に犯されるのはみじめだぞう。お前は俺に逆らえない。へへっ。特別に許してやる。でも今回だけだぞ。二度と俺を睨んだり口答えしたりするなよ。いい妻でいろ。わかったな」

「うん。わかったよ」

「それでいい。くっくく。お前は顔も身体も歳の割に幼い。女としての魅力に欠けてやがる。でもその分あそこも小さくて締まりがよさそうだ。楽しみだぜ。お前の処女はきっとすげえきつくて気持ちいいだろうなあ」

 ワンカナはまだ知識としてしか男女の交わりを知らない。でも夫を喜ばすにはどうすればいいか、夫を持つ大人の女性たちに性教育を受けていた。

 男は女が締め付けてあげるほど喜ぶというが、女のワンカナにはぴんとこない。でもギンギラはそれを楽しみそうにしているし気持ちいいらしい。

(いい妻にならないと。夫を寝床で喜ばせるのがいい妻だ。魔物と戦うより怖くない。痛くない。大丈夫。嫌な奴相手でも頑張れる)

 ギンギラは笑いながらワンカナの両肩を叩く。そして立ち去っていく。一人取り残されたワンカナは、大会で優勝した喜びをすっかり忘れてしまっていた。

posted by 二角レンチ at 18:40| ドルイド少女ワンカナ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年02月17日

ドルイド少女ワンカナ(2)アキハイト

ドルイド少女ワンカナ(2)アキハイト

 深い森の夜。闇は深く星々すらその光を飲み込まれそうだった。しかし森の中の広場では大きな焚火が焚かれ、それを囲むように村中の男女が酒を飲み肉や果物などを食べていた。

 強い魔物がたくさん棲むこの森では、ただの獣はめったに穫れない。隠れ潜む小動物は見つける事すら難しい。よって村の者たちは肉を得るために恐ろしい魔物を狩る。

 昼に十八歳の男女それぞれの最強を決める大会が行われた。その順位により夫婦が決まる。優勝者の女ワンカナは、同じく優勝者の男ギンギラと夫婦になる。ちなみに、男女の余りがいればそれは夫や妻を亡くした未亡人の内若い者の再婚相手となる。

 ギンギラは植物から採れる樹液を発酵させた酒を飲み、酔っぱらっていた。男の大会の優勝を祝いに来る女たちそれぞれの酒を木の実の器で受けては飲み干しその女に抱きついたり身体を触ったりしてはお礼とする。

 族長の息子であるギンギラは特別だ。誰も逆らえない。族長の息子や娘たちはこの村で何をしても許されるし誰も逆らってはいけない。

 ワンカナはこの宴の後、夫婦の契りを結ばないといけないので憂鬱だった。でもそれは内面で押し殺し、女の大会で優勝した事を祝ってくれる男女たちの酒を杯で受けながら笑顔で返す。

「凄かったなあワンカナ。圧倒的。決勝でも一方的だったじゃねえか」

「いやあ。えへへへ。それほどでも。まあ優勝以外する気はなかったけどね」

「へっ。村一番の強者だからなワンカナは。熟練の魔術師と戦っても勝てるんじゃねえか」

「まあね。うん。お酒って旨いねえ。今日までお預けだったからさあ。成人するっていいね」

「そうよワンカナ。これであなたも大人の仲間入り。そして今夜、女の仲間入りも果たすのよお」

「僕は女だよ」

「そうじゃないでしょお」

 熟女はそう言うとにんまり笑いながらワンカナに顔を寄せ耳元でささやく。

「あたいはギンギラの筆下ろしをしてやったんだよお。あいつ若いのに立派だよお。楽しみにしてな。あたいみたいな夫を亡くした未亡人たちみんなでたっぷり鍛えてあげたからさあ。ギンギラ凄く上手くなっているから。きっと処女でも気持ちよくしてもらえるよお」

「へえ。そりゃ楽しみだなあ。あー、お酒を飲んで大人の仲間入り。そして男に抱かれて女の仲間入り。うん。もう僕が童顔だからって子供扱いされなくて済むってもんだね」

「そうそう。男に抱かれるのは女の幸せだよお。初めは痛いけど、慣れればとってもいいもんさあ。楽しみにしてな」

 熟女はワンカナの肩をばんばん叩いて手を振って向こうへ行く。ワンカナは笑顔のままぼんやり考える。

(昼間生意気言っちゃったからなあ。ギンギラの奴、きっと僕を痛くするだろうな。でもいいや。魔物の牙でかじられたときの方がきっと何倍も痛かったんだから。男の牙はたったの一本。骨も入っていないただの肉なんだから。魔物の牙より痛いはずがないや)

 ワンカナは努めて平気だと思おうとしているが、やはり女だ。だんだん初夜の時間が近づいてくるにつれて少しずつ不安が大きくなってきた。

(大丈夫。魔物よりも痛くない。怖くない)

 ワンカナは笑顔で陽気に振る舞い不安を押し殺す。村のみんなが代わる代わるワンカナをお祝いに来て酒を注ぎほめてくれる。とてもいい気分だ。女たちにはギンギラ、つまり族長の子の妻になれるのを大層うらやましがられた。

(族長の子の妻って何がいいんだろう。そりゃあ他の女よりちょっとは優遇されるけど。男が偉いこの村では、女は男の奴隷。何されても文句を言えない。妻は夫に絶対服従。あのギンギラにだよ? 強い人なら尊敬出来るから服従してもいいけど、族長の子だからって優勝を譲ってもらった本当は弱いギンギラに服従させられるなんて屈辱だ。僕の強さを馬鹿にしている)

 何度考えても納得いかない。でも村の掟にみんな従っているからワンカナだって守られこの歳まで生きてこられたのだ。掟に逆らってはいけない。

(ああ。もうすぐ宴が終わっちゃう。十八歳の男女が夫婦となるためそれぞれの家で初めて交わる)

 ワンカナは強い男の子供を産みたかった。それがこの村の女の一番の幸せ。ワンカナとて例外ではない。なのにどうして村の十八歳の中で一番強いわけではないギンギラに抱かれ子を産まねばならないのか。

(考えちゃ駄目。嫌がっちゃ駄目。わがまま言っちゃ駄目。我慢しないと。従わないと。でも)

 村の掟は覆せない。しかしワンカナは何とかしてそれがひっくり返る事を切に願った。

 その願いが天に通じたのか。まさか。でも普段なら起こらない事が起こり、ワンカナの生涯はこの小さな村の中だけで終わる事はなくなった。

 強い魔物が住む森の中にあるこの村は、魔物に脅かされながらも同時にこの森を通れない外界の人間たちから村を守っていた。科学を良しとせず魔術のみに頼る部族の多くは魔物が棲む危険な場所に村を作って住む事で、魔物を狩りながらも守られるという共生関係を築いていた。

 だから外界の、森の外の人間がこの村を訪れる事は滅多にない。ワンカナは、両親が生まれてからでさえ外の人間がこの村に来た事は無いと聞いていた。

 外界との交流は、たまに村の外の情勢やわずかに必要となる物資を得るために村の強者たちが森を通り抜ける時だけだ。強い魔物に殺される事も多く、その生還率はとても低い。よほどでない限り村の外へ村人が行く事は無く、その逆は少なくともここ数十年では一度も無かった。

 その天変地異よりも珍しい事態が今日起こった。宴の間でも森の外の魔物たちが村に入らないよう警戒している村人の一人が駆けて来る。

 その走ってきた男は年老いた族長の元へ走り寄ると、荒い息を必死に整える。

「何事か。このめでたい日に魔物が攻め入って来たのか」

「い、いえ、ぜえ、ぜえ」

「では何だ。早く話せ」

「はあはあ、はい。魔物では、なく、人間が、外の人間が来ました」

 族長は驚きに目を見張る。周りで一緒に酒を飲んでいた男女たちも驚きざわめく。

「なんと。我らでさえ通り抜ける事は困難な、強い魔物がひしめくこの森を通り抜けてきた人間がおるだと?」

「はあ、はい、そうです」

「何奴だ。どんな連中なのだ」

「魔術師です。強い魔物を退けられるのは強い魔術師だけです。三人。男が二人、女が一人。男の一人は白銀に輝くまばゆい鎧をまとっていました」

「白銀に輝く鎧だと。まさか」

「はい。はあ、はあ、あれはまさしく、噂に名高いパラディンでございましょう」

 族長たちの会話を周りの男女も聞く。宴に浮かれていた男女もみんな静まり返り周りに集まっている。聞いた話を次々と他の人に伝えながらざわざわと話している。

「世界にわずか数人しかおらん、最強の魔術師パラディン。そのパーティがこの村を目指して来るというのか」

「はい。私は木の上で見張りをしておりましたが、遠くに見たあのパラディンの強さは異常でした。輝く鎧に輝く剣。我らドルイドには作れない鋼の魔術武装。襲い来る魔物、ワータイガーを瞬きする間も無く一刀両断。強すぎます」

「なんと。我らでも手こずるワータイガーをただの一撃で倒したと言うのか」

「あんなに強く、恐ろしい魔術師など見た事ありません。とても鋭い目をした冷酷そうな男でした」

「して、そのパラディン以外の者は?」

「大きな男はにやにや笑っているだけでした。細身の女は黒いローブをまとっていました。大男は何者かわかりませんが、女はメイジでしょう」

「大規模破壊の魔術を使うクラス、メイジか。武術はどのクラスよりも劣るが代わりに強力無比の破壊をもたらす魔術を多発出来る。肉弾戦を行わないゆえ象徴として動きにくいローブを好んで着ると聞く」

「そうです」

「お前たち見張りを置いているのはこの村の端から三十キロも先だ。いかに強くとも魔物たちを倒してこの村にまでたどり着けるものか。我らしか知らん森の中の決まったルートを通らねば魔物との遭遇率が高すぎる。無事にこの村までは来れん」

「しかしあの強さ。大木よりも巨大なワータイガーをただの一撃で苦もなく殺した強さ。襲い来る魔物たちを全て殺してこの村までたどり着くやもしれません」

「ふむ。魔物の群とたった三人で戦いここまでたどり着けるとは思えぬが。その前に消耗し尽くして魔物に食い殺されよう。我らとて、魔物とほとんど遭わない木々の間の決められたルートを二十人以上の部隊で行っても帰って来られるのはわずか一人か二人なのだぞ」

「ですが」

「わかったわかった。お前がそこまで怯えるほどの強さ。警戒しよう。何故この村を目指すのかはわからぬが、我らに害を成す者たちに違いあるまい。外の世界の連中は外の世界の災いをもたらす。皆の者。聞いたな。宴は中止だ。警戒の配置につけ。よもや魔物巣食う森を通り抜けたどり着けるとは思えぬが、その死を確認せねば安心出来ん。他の見張りの報告はまだか」

「見張りは来ねえよ。へっへっへ。報告出来ねえから持って来てやったぜ」

 村人たちが全員ぎょっとする。知らない男の声がした方を振り返る。

 広場の端、森の木々の闇からぬるりと男が出てくる。でかい。並の背丈ではなく熊か魔物かというぐらい巨体で筋骨隆々。両腕を上げて肩に男女数人をまるで袋のように無造作に重ね担いでいる。

 両肩に載せて運んでいる男女数人がどさりと地面に放り出される。全員気絶している。見張りに立たせていたこの村の者たちだった。

 族長が驚き声を張り上げる。

「なんと。見張りに立たせていた屈強なる魔術師たちを倒すとは。しかも殺さず気絶させているだけ。よほどの力の差が無ければ出来ぬ芸当だ」

「あー? ったりめえだろ。俺を誰だと思っていやがる。ソーサラーの魔術は幻惑だ。けがさせずに幻で翻弄し夢の中で気絶させるなんざ朝飯前だぜ。もう晩飯も食った後だけどな。はっはっは」

「森の魔物たちはどうしたのだ。なぜ生きてこの森を通り抜けられた。ソーサラーの幻術とやらの仕業か」

「あー? まあそれぐらい朝飯前なんだが、アキハイトの野郎が一人でばっさばっさと斬り倒しちまいやがる。俺の出番なんざねえさ。おかげで俺は魔物でなくこんな雑魚共の相手をさせられた。あーあ。退屈だったぜ」

 見張りに立たせていて今地面に横たわる者たちはそれなりの強者だ。それを殺さず倒すだけでも難しいのに六人も捕獲しここまで連れてくるとは。どれほど強いというのだろう。

「ちょっとベイド。いい加減私たちも出してちょうだい。あんたが出さないとこの闇から出られないんだから」

 森の木々の間、深い闇から若い女の声がする。ベイドは振り返り頭をかく。

「おお、わりいわりい。いいぜ。出て来いよ」

 ベイドと呼ばれた大男が太い指をばちんと鳴らすと、木々の間の深い闇が薄れる。向こうが見えるようになり、そこには若い男女が立っていた。

 黒いローブを来た細身の女は髪も黒くてとても長い。前髪ごと後ろに垂らして広い額を露わにしている。そしてその横には、闇を斬り裂くようにまばゆく輝く白銀の鎧を着た、りりしく美しい顔の青年が立っていた。

 見張りの報告にあった二人の容姿そのものだ。つまりこの連中は、見張りが発見した地点からここまで強い魔物がひしめく森をこんなわずかな時間で突破した事になる。

 強いなんて物じゃない。こんな芸当が出来るなど信じられない。たった三人の魔術師が、傷一つ負わずに魔物全てをなぎ倒してここまで来たというのか。

 あり得ない。治癒の魔術でけがを癒したのだろうか。白銀に輝く魔術武装の鎧はパラディンの証。神の加護を受け魔術として行使するパラディンは、ドルイドとは異なる強力な治癒の魔術を使えるそうだ。

 村人たちは驚きのあまり言葉を失い立ち尽くしている。想像すら出来ない強さの三人。強い魔物を数人がかりで狩り食料としながらも殺される事も多い村人たちとは次元の違う強さ。とてもかなわない。誰も動けない。

 族長は恐れ震えながらも毅然とした態度で問う。怯えた態度を見せれば村人たちの士気に関わる。

「お前たちは何者だ。何をしに、魔物の森の奥で暮らす我らを脅かしに来たのだ」

「へっへっへ。びびってやんの。おいアキハイト。こいつはとんだ外れだぜ。まあ俺たちと並ぶ強さの奴なんてそうそう見つかるもんじゃねえがな」

 大男は無礼にも族長を指さしへらへら笑う。そして白銀の鎧を着た男に語りかけた。

 それに応えて、とても生真面目そうな鎧の男が若いのに重苦しい声で返事する。

「ベイド。お前はしばらく黙っていろ」

「へいへい」

 ベイドと呼ばれた大男はお手上げのポーズを取ると下がる。黒いローブの女の横に並び、へらへらと軽口を叩いている。

 白銀の鎧をまとった男が前に進み出る。とても重そうな鋼の鎧。しかし魔術で編まれた鎧は重さを感じないし動きを制限しない。守る力が形を取っており、術者の妨げになる事は無い。

「仲間が失礼をした。俺はアキハイト。世界に五人しかいない最強の魔術師パラディンの一人だ」

 アキハイトと名乗った男は胸の前に手を添え軽く頭を下げる。兜はかぶっておらず手に持ってもいない。魔術武装なので必要なとき以外は構築しないで引っ込めておける。

 長老は怯えながらも皆の前に立ち白銀の男と向かい合う。

「わしはこの村の族長モンモク。再び問うぞ。お前たちは何をしにここへ来たのだ」

「徴兵だ」

 アキハイトの返答を聞いて村人たちがざわめく。族長は手を振って皆を黙らせると話す。

「森の外の世界では戦争が行われていると聞く。いつの時代も戦争は絶えない。しかしわしらはこの村で暮らす。外界とは関係無い。わしらを巻き込むな。戦争は戦争をしたい者だけですればよい」

「そうはいかん。この戦争は人間同士の争いではない。人間と魔物の軍勢との戦争なのだ」

 再び皆がどよめく。もう黙らせられない。みんな口々に騒ぐ。族長は皆を黙らせるのを諦めそのまま話を続ける。

「魔物の軍勢? 魔物は強いが知性の無い獣だ。同種が群れる事はあれど軍勢など形成しない。魔物を率いる事が出来る者などいない」

「それが出来る者がいるのだ。魔王。魔物でありながら人の姿に化ける事が出来る魔物がいるのは知っているだろう。その頂点。歴史上類を見ない強さと支配力。知性の無い獣にしか過ぎない魔物を統率し軍勢を作り上げ戦争を行おうとしている」

「そのような事はあり得ん。あるわけがない」

「事実だ。俺はパラディン。神の使徒たる人間の内もっとも神の加護を受けし者。神に誓って嘘は言わん。強い魔物を統率し軍を成す魔王により人間は全て滅ぼされようとしている。この戦争に敗北すれば人間は全て殺される。森の中で無関係だと言い張っても魔王の軍勢からは逃れられんぞ。魔王は人間を一人残らず滅ぼすと宣言している」

「そんな。しかし」

「信じようが信じまいがどちらでもかまわん。しかし徴兵はさせてもらう。心配するな。お前たち全員を兵士としに来たわけではない」

「どういう事だ?」

「お前たちは魔王の軍勢が攻めてくるまでこの森に隠れて暮らしていればいい。俺たちは魔王と直接戦い討つ使命を帯びたパラディンのパーティ。そのパーティに加える強者だけを求めている。ここへ来るまでに見張りのドルイドたち数人をこうして倒したが、ベイド一人で楽勝だった。強いドルイドたちの住む村と聞いていたが大した事はなかったな。森の魔物たちは弱いのに、あんな連中に怯えて殺されて。話にならん。期待外れもいいところだ」

「わしらは強さを誇りとしておる。それを侮辱するのはいかに魔術師の頂点たるパラディンといえど許さぬぞ」

「許さなければどうだと言うのだ? 力量差がありすぎる。戦闘になれば俺たち三人どころか一人でも貴様等を皆殺しに出来るのだぞ。こうして見張りのドルイドたちを無傷で捕獲したのだ。それで力の差ははっきり示せたはずだ。無益な戦いはしない。わかるだろう」

 アキハイトは感情を交えず淡々と話す。細い目が冷徹過ぎる。うぬぼれや傲慢でなく本当に、ただ力の差がありすぎて勝負にならないと言っているのだ。

 強い魔物の住む森で、魔物を狩りながら生きてきた部族。強さは何よりも誇りだ。それをここまで見下されないがしろにされる。許せる物ではない。

「ぐぬううう……」

 族長は歯を食いしばって堪える。堪えねばならない。怒りにまかせ戦いを挑んでは、誇りは守れても命は守れない。

 上には上がいる。決して強さに溺れる事なかれ。大自然と魔物の理の中で生きる部族ゆえ、かなわない敵がいる事を覆せない事実として受け入れられる。

「……たしかに、見張りのドルイドたちはそれなりの強者。それを六人も無傷で捕獲出来るならば、この村総出でもかなわぬであろう」

「わかってくれて何よりだ」

 アキハイトは族長が矛を収めたので無駄な戦いをせずに済んだと安堵する。

「しかし無駄足だったか。噂に名高いドルイドたちがこんなに弱いとはな。俺たちはただの兵士を徴兵に来たのではない。俺たちのパーティに加えるに足る真の強者を探している。魔王の軍勢ではなく魔王その者を討つために最強のパーティを作るためだ。俺以外の四人のパラディンも同じように、魔王と直接戦うために最強のパーティを結成し修行の旅をしている」

 族長は強さを侮辱されて震えている。それでも皆の命を守るために堪えている。そんな族長を見て他の者たちも皆怒りを堪えた。

 しかし、強さを何よりも誇りに思いそれを自負している、今日最強が証明されたばかりの少女だけは違った。

「聞き捨てならないね。君たちに並ぶほど強い者がこの村にいないだって? いるよ。僕はワンカナ。僕だって他の誰よりも強いよ。この村は強さを誇りとしみんなそれを誇りにして生きている。侮辱するなよ。そんなセリフは僕に勝ってから言え」

「ワンカナ!」

 族長が叫んでたしなめる。でも小柄な少女であるワンカナは、臆する事無くアキハイトの前に歩み出て背の高い男を睨み上げた。

posted by 二角レンチ at 20:41| ドルイド少女ワンカナ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年02月18日

ドルイド少女ワンカナ(3)樹木の巨人

ドルイド少女ワンカナ(3)樹木の巨人

 森の中にある拓けた広場。広場の中央にある大きな焚火を背後にワンカナは毅然と立つ。

 見張りのドルイドたちを難なく倒し、強い魔物ひしめく森を短時間で通り抜けてきたパラディンのパーティ。間違い無く強い。アキハイトたち三人は、ただ一人でもこの村人総出でかかってもかなわないだろう。

 例外はただ一人、ワンカナだけ。ワンカナは他の村人たちとは違う。ドルイド魔術に優れ圧倒的な強さを持つ。この村の中では異質と言えるほど強すぎる。

 それでもアキハイトたちにかなうわけがない。アキハイトは世界最強の魔術師であるパラディンの一人。それが魔王を討つための仲間を探して噂を頼りにここまで来た。でもこの村のドルイドたちは弱すぎて話にならないと侮辱され、強さを誇りとする部族を背負ってワンカナは一人勇み出た。

「ワンカナ。やめるのだ。お前はたしかにとても強い。それでもパラディンにかなうはずがない」

 ワンカナは腰に手を当て小さな胸を突き出すようにふんぞり返って背の高いアキハイトと睨み合い、止めようとしてくれる族長に背を向けたまま大声で叫ぶ。

「そんなのやってみなくちゃわからないだろ。僕は強いんだ。誰よりもね。この強さも誇りも誰にも侮辱させない。僕らドルイドは最強なんだ」

 アキハイトは無言で黙っている。その後ろにいる大男のベイドがくっくと笑う。

「おいおいガキが。子供はお呼びじゃねえよ。引っ込んでいろ。ガキの遊びじゃねえんだぜ」

「僕はガキじゃないよ。十八歳で、もう大人だ」

「嘘つけよ。本当なら童顔にもほどがあるぜ。まだ女抱いた事もねえお子さまだろうが」

「ふざけないでよ。僕は女だよ。村のしきたりで今日夫婦の契りを結ぶ。そうすれば身体も大人の仲間入りだ」

「はあ? 女あ?」

 ベイドはあごに指を当てまじまじとワンカナを見る。

「ああ。道理で胸にも獣の皮を巻いているわけだ。他の男は胸丸出しだもんな。顔が女ぽっいし声も甲高いから女装しているオカマかと思ったぜ」

 何という侮辱。女に向かって女装している男などとは。まあ自分の事を僕と言い、口調も男っぽいワンカナは男の子と見られても仕方ない。女と遊ぶより男と一緒に戦う方が好きなので、男っぽく育ってしまった。

「ふざけないでよ。気分悪いなあもう。ベイドって言ったっけ? 君から相手してやる。僕の強さでぶっ倒してやるんだから」

「おいおい。俺はガキには興味ねえよ。戦うのも抱くのも物足りねえだろが」

「僕が怖いのか」

「あー?」

 へらへら笑っていたベイドがちょっと呆れた顔をする。

「やれやれ。大人ってのは分別がつく物だが。本当に十八歳なのかねえまったく。しょうがねえ。大人の厳しさって奴をちょいと教えてやるか」

 ベイドが頭をかきながら前へ出る。そして白銀の鎧をまとうアキハイトの横に並ぶ。

「いいよなアキハイト? せっかくここまで来たんだ。ちょっとだけ遊ばせてくれや。俺たちの仲間にするほど強い奴がいなくてとんだ無駄足だったぜ。強い魔物の住む森ってのも楽勝だったしな。ドルイドって弱いよなあ。今度から徴兵対象にするのよそうぜ」

「ベイド。お前のソーサラー魔術は幻惑だ。化かし騙し惑わす。それでは勝敗に納得しまい。ドルイドは力を誇りとする。同じ力の真っ向勝負でねじ伏せねば負けを自覚出来まい。俺が戦う」

「あー?」

 アキハイトも背が高いがベイドはそれより頭一つ分以上も高い大男だ。アキハイトを上から睨み下ろす。アキハイトも細く鋭い目で睨み返す。

「ちっ。わかったよ。どうせドルイドなんざ全員雑魚だ。譲った所で惜しくもねえ。くだらねえぜ。興醒めだ。とっとと終わらせろよ」

 ワンカナがベイドに向かって叫ぶ。

「逃げるのか。卑怯者。僕が怖いんだな」

 ベイドはもう興味を失っている。つまらなそうな表情でじろりとワンカナを振り返り見つめる。

「お前がアキハイトを倒せたら相手してやるよ。パラディンは世界最強の魔術師だって言われているがな、それは正攻法の力勝負の場合だ。俺のソーサラー魔術は幻惑。力なんか関係なくどんな強い相手でも倒せるのさ」

 ベイドはひらひらと手を振り歩き去る。黒いローブの女の所へ行き何かしゃべっている。

 ワンカナは怒りに震えるが、アキハイトが語りかけるとそっちを向く。

「ワンカナと言ったな。お前はこの村で一番強いのか?」

「そうだよ」

「本当か。異論のある者はいるか」

 アキハイトが村人たちをじろりと眺める。みんなびびって目を伏せる。

 今日の大会で優勝したギンギラを始め、強い男たちや熟練の戦士たちでさえ目を伏せる。強い魔物がひしめくこの森をやすやすと通ってきたほど強いアキハイトたちの強さは別格だ。とてもかなわない。

 しかしワンカナとて別格の強さを誇る。村人たちの誰もワンカナに勝てるとは思っていない。ワンカナがこの村で最強という事に異論は無いし、ワンカナが戦うならもしかしたら勝つかもしれないという期待もわずかにある。

 アキハイトは臆病者たちに呆れ大きなため息をつくと、この村で唯一自分たちに立ち向かう勇気ある者に目を向ける。

「いいだろう。せっかくここまで来たのだ。最強のドルイドだと言うのを試さずにただ帰るのも無意味だからな。力を試してやる。もし俺が認める強さを示せたなら俺たちのパーティに徴兵してやろう」

「認める? 倒したらの間違いでしょ。でも残念。僕は君たちの仲間なんかにはならないよ。ただ僕たちの強さを侮辱した事を謝らせる。そのために戦い勝つんだ。君たち三人共だよ。三人とも倒して土下座させてやる」

 アキハイトは無表情だ。感情が無いのだろうか。いや、感情を示すまでもないという見下しなのだ。

 彼の後ろで男女二人がげらげら笑う。

「おいおい聞いたかラズリ。あのガキ俺たち三人を倒すってよ」

「本当にそれが出来たら謝罪でも何でもしてやるわよ。出来ない事を言うのって本当ガキよねえ」

「お前みたいに大人の女だったらよかったのになあラズリ。ガキはやだねえ。やかましい」

「ベイドあんた。あんなガキに興味無いでしょうね」

「まさか。俺の興味ある女はお前だけだぜラズリ。愛しているよ」

「なら他の女を見ないの。ドルイドってやらしい格好。獣の皮を腰と胸に巻いて肌を露出させて。男を誘っている」

「見てねえよ。俺が恋人のお前以外を見るわけないだろ」

「今まで何度浮気したと思っているの? 今度したら承知しないからね」

「いつも承知してねえだろうが。相手の女にだがな。もうしねえよ。お前に四六時中つきまとわれて浮気なんか出来るわけねえだろ」

 どうやらベイドとラズリというこの二人の男女は恋仲らしい。でもどうでもいい。ワンカナはアキハイト一人に集中する。

「ワンカナ。お前と決闘してやろう。力を見せろ。力を誇りとしそれを侮辱されて許せないなら俺を倒してみろ」

「やってやるよ。見てろよ。森の外の人間って初めて会ったけど嫌な奴ばかりだね。虫酸が走る」

 ベイドが口を挟む。

「アキハイトはたしかにいけすかねえな。同感だぜ。へっへっへ」

 アキハイトは反応しない。ベイドの悪口に慣れているのだろう。無視している。

「決闘の場所へ案内しろ。どこがいい?」

「ここでいいよ。今は宴に使っているけど決闘でも何でもこの広場でするのが村のならわしなんだ」

「そうか。魔術と武術。存分に使え。ほんの力試しだ。むろん殺しはしない。降参するなら即座に戦闘を止めてやる」

「ふん。こっちだって殺しはしないよ。殺す力はあるけどドルイドは自然の力を借りて魔術として行使する。生命を尊敬し尊重する。嫌な奴の命でも無意味に奪いはしないよ」

「殺す気で来ないと俺は倒せんぞ。そして弱者に殺されるほどやわではない。いいから本気の殺意を抱いて来い」

「駄目だって言っているだろ。分からず屋だなあ。君みたいな奴の命でも大切なんだ。力試しぐらいで殺すなんて命を粗末に出来ないよ」

「ふん」

 アキハイトは無表情のままだが目を細める。その眼力は凄まじく、怖ろしい魔物に睨まれても動じないワンカナがびくりと震える。

「この村の連中は外へ出ないのだったな。魔物の住む森を通り抜けるのはお前たちにとっては大変らしいからな。外界との交流がほとんどないからわざわざこうして出向いたのだ。しかし外の世界を知らなすぎる。戦争と戦乱を知らず、強者も強い魔物も知らない。世間知らずにもほどがある。俺をなめているようだがそれをすぐに後悔させてやろう」

 こんな恐ろしく冷徹な目をワンカナは見た事が無い。魔物よりも怖い。初めて人間相手に畏怖の念を抱いた。何なんだこいつは。本当に人間なのか。

「ぼ、僕だって、君に後悔させてやる。僕は本当に強いんだよ。そりゃあ外の人間や森に住む以外の魔物を僕は知らない。でも僕の強さは本物なんだ。負けないよ」

 向こうでベイドとラズリが笑っている。

「どもってやがるぜ。くっくっく。アキハイトはおっかねえからな。怖い怖いおお怖い」

「こんな村に閉じこもっている世間知らずに、私たちがどれほど強いかわかるわけがないわ。相手の強さを計れもしないくせに強がって。ガキってやあねえ」

 ワンカナは侮辱するだけの二人を無視する。

「じゃあ決闘だ。みんな下がって。広場の端までね」

 ワンカナが手を振る。族長を始めみんな素直に下がる。

 ワンカナの強さは本物だ。ワンカナだけが力でも勇気でもこの恐ろしいパラディンに対抗出来る。やり返せる。みんな自分では出来ない事をワンカナに期待する。

 広い広場の端まで数百人の村人たちが下がる。普通はここまで下がる必要は無いのだが、世界最強と呼ばれるパラディンの戦闘がどれほど凄まじいのか想像出来ない。だからみんな近くで観戦する度胸は無かった。

 でもワンカナは別に、パラディンが未知の強さを持つから巻き込まれないようみんなを下がらせたのではない。逆だ。自分がみんなにとって未知の強さを持つから巻き込まないように下がらせたのだ。

「みんな、ごめん!」

 ワンカナはアキハイトと対峙しながら声を張り上げる。

「僕たちの部族は強さを誇りとする。だから決闘で手加減するなんて強さへの侮辱だ。でも本当にごめん。僕が本気を出したらみんなは相手にすらならない。自分でも異常だと思うけど、僕は強すぎるんだ。だから今日の大会でも今までも、僕は力を隠してずいぶん手加減していたんだ。みんなの強さを踏みにじる許されない行為だ。だから秘密にしていた。でもこのパラディンはきっと強い。僕が本気を出さないと勝てない。だからもう、隠すのをやめるよ」

 村人だちがざわめく。決闘で手加減など強さへの侮辱だ。許されない。誰よりも強いワンカナが、あれで全力でなく手加減していただって? 誰も信じられない。怒るよりも理解出来ずに困惑する。

 ベイドが大笑いする。

「わっはっはっは。はったりは俺の十八番だぜ。しかしまっとうな力をぶつけて戦う正統派タイプのドルイドでもこんな戦術使う奴いるんだなあ。悪い悪い。みくびっていたよ。無垢なガキの振りだって仕込みかよ。見抜けなかったぜ。騙しが得意な俺をたばかるとはなかなかやるじゃねえか」

 ワンカナはじろりと横目でベイドを睨む。

「黙っててよベイド。うるさいなあもう。僕は騙しなんかしないよ。みんなの強さを傷つけないよう力を隠していたのは謝るよ。でもこれは虚勢やはったりじゃない。僕は並のドルイドとは違うんだ」

「くっくっく。はったりじゃねえなら本当の力を見せて見ろよ。俺のソーサラー魔術みたいに幻惑で騙すんじゃねえ。本物の、実在の力って奴を見せてみろよ」

「見せてやるよ。まったく。これを見れば僕が並のドルイドじゃないってわかるよ。他にこんな魔術を使えるドルイドなんて聞いた事無いからね」

 ワンカナはベイドから目を離しアキハイトの方を向く。ひらりと後ろに跳躍してアキハイトと十分な距離を取る。

 アキハイトが魔術武装を展開する。白銀の甲冑だけでなく、右手に白銀の大きな剣を、光を束ねるようにして紡ぎ出す。

 その剣をまっすぐワンカナに向けて声を張り上げる。

「我が名はアキハイト。世界に五人しかいないパラディンの一人。貴様に決闘を挑む」

 ワンカナも剣など持たないが代わりに右の拳を前に突き出し宣言する。

「僕はワンカナ。ドルイドだ。でも他のドルイドとは違うよ。伝承でもどのドルイドも使えないような凄い魔術を使える力があるんだ」

「はったりでなく本当にそんな力があるなら見せてみろ。俺たちは最強の仲間を集めるため、ドルイドに限らず魔術師の知識を学んでいる。この村の事も調べられる限り調べてから来た。本当に俺たちの知らないドルイドの力などあるのか。村に閉じこもっているお前たちの狭い知識の限りではないのか」

「見ればわかるよ。圧倒的。パラディンだろうが何だろうがこれにかなう奴なんかいるものかあ!」

 ワンカナは叫ぶ。突き出した右の拳を広げ横に大きく振るう。

 ワンカナの立つ地面が鳴動する。ぼこぼことひび割れ隆起していく。

 その地面から大木が生える。それも一本ではない。ワンカナを載せたまま天に向かって勢い良く伸びていく大木が、他にも何本も地面を突き破って生えていく。

 アキハイトは後ろへ跳び退く。跳び退いた地面からも大木が噴水のように怒涛の勢いで生えてくる。

「木を生やすドルイド魔術は知っている。しかし同時に何十本も、まるで森を生み出すように生やすとは。なるほどこれはドルイドの規格を超えている。ここまで出来るドルイドは聞いた事がない」

 はるか上空。月に届かんばかりの大木のてっぺんにいるワンカナが夜の澄んだ空気によく通る声で返答する。

「何言ってるの? 大木を生やしての攻撃じゃないよ。ここからがどんなドルイド魔術でも聞いた事も無い真骨頂だよ」

「何?」

 地面から大木を生やして盾にしたり敵を突き上げたり押し潰したりする攻撃魔術。それはドルイド魔術としてたしかにある。複数の木を同時に召喚出来るというのは聞いた事が無く、それだけで驚嘆に値する。しかしワンカナはそんな物ではないと言う。

 正直アキハイトはワンカナを侮っていた。しかしこの力。侮っていいレベルではない。そしてそれ以上の先があると言う。これはもはや警戒に値する。

 構えるに値しないと思っていたアキハイトだが、何が来るかわからない。左手に盾を、頭に兜を、光を編むようにして形成し完全な武装をする。

「おいおいアキハイト。完全武装はやりすぎだぜ。びびりすぎじゃねえのか。へっへっへ」

 軽口を叩くベイドだが、冷や汗をかきながら大木を見上げている。ここまで巨大な大木を何十本も同時展開出来るドルイドなど聞いた事が無い。別格中の別格だ。

(マジかよ。あんなガキが、死にものぐるいで魔術を鍛え長年戦い続けた俺たちに匹敵する魔術を行使出来るだと?)

 この力だけでもはや侮ってはいけない強敵だと理解出来る。強者は強者の強さを計れる物だが、ワンカナの力はまるで計れなかった。

(何なんだこいつは。ドルイドだからか? いや、他の見張りのドルイドたちは強さを計れたし弱かった。こいつは異常だ。これだけの力があってその力が感じられず計れないなんてありえねえぞくそ。魔物でも人間でも力は強いほど感じられ圧倒される。やべえやべえ。軽く見て戦っていたら俺、やられていたかもしれねえぜ。いやいや。俺は相手がいくら強くても勝てるけどな)

 ベイドはワンカナの認識を改める。驚愕し脅威と認める。しかし怯えたなどと態度に出してはいけない。アキハイトは完全装備の武装を展開して最大の警戒を表したが、ベイドは顔をひきつらせながらも軽口を叩く。

「おいおいラズリ。大木を数十本の同時展開。こいつはすげえな。でも規格内だぜ。大した事ねえよ。なあ?」

 ベイドが横を見ると、ラズリは目を大きく見開いていた。

「信じられない……なんて魔術の規模なの。これだけの力をあんな若い子が?」

「おいおいラズリ。魔術の規模ならお前だってこれぐらい楽勝だろ。お前の方がすげえよ。なあったら」

「黙っててベイド」

 ベイドはラズリの肩に置いた手をしぶしぶ引っ込める。軽口言って虚勢を張っている場合ではない。この先に何があるというのか。目が離せない。強者は強者に魅入られる。

「ちっ」

 ベイドは腕を組んで黙り込む。そしてワンカナの計れなかった力を今度こそ見定めようと集中する。

 ワンカナが大木のてっぺんから叫ぶ。

「行くよアキハイト! 大丈夫。殺さないからね。全力を出したら蟻を潰すようにぷちっといっちゃうもんね」

「世界最強の魔術師であるパラディンを蟻などと。巨大な木がなんだというのだ。もっと強く早く怖ろしい魔物だってこの森の外にはいくらでもいる。俺はそういう魔物を打ち倒してきた」

「僕のこれも、魔物以上に早く強く怖ろしいよ。行っけえ! 樹木の巨人!」

 広い広場を埋め尽くし、新たな森を生み出した巨木がよじれ絡まり合う。ぐるぐるぎゅうぎゅうねじれながら巻き付き形を変えていく。

「何だと……」

 こんな魔術は聞いた事が無い。世界中にある珍しい魔術でさえも調べ尽くして学んでいるアキハイトでも、ドルイドにせよ他の魔術にせよこれほど巨大な巨人を作り出せる魔術は知らなかった。

 樹木の巨人。一本でも敵をなぎ倒せる強さを持つ巨木が何十本もねじれ絡まり、木で編んだ巨大な人の姿となる。

「嘘だろおい」

 さしものベイドも絶句する。怖ろしい魔物とたくさん戦ってきたが、その魔物たちをも圧倒せんばかりの巨人は魔物よりもはるかに畏怖を覚えさせる。

 ねじれた大木で編まれた巨人は自然の雄大さと美しさを持つ。まるで山を見て畏れを抱くようだ。見ほれる。誰も彼もがまるで神を見るかのように壮大な巨人を見上げ魅入られる。

 アキハイトがいち早く気を取り直す。

「俺は神の加護を受けたパラディンだ。神以外が神の雄大さを備えるなど許さん」

「あははは。何それ? これは神様なんかじゃないよ。自然の雄大さはあるよね。うん。誰にも隠していた僕だけの魔術。僕はドルイドの中で一番自然に愛されているって感じられるんだ。神様なんかじゃないよ。自然は神より偉大だよ」

 無感情なアキハイトが怒りの叫びを上げる。顔全体を覆う兜の下の顔はやはり怒りに歪んでいるのだろうか。

「貴様許さんぞ。神より偉大で雄大で荘厳なる者など他にいるものか。自然は神が作り出した美だ。それが神より偉大なはずがない」

「神の力を代行するパラディン様。あはははは。自然に愛されその力を代行するドルイドの僕に勝てたら、君の神様とやらが僕の大好きな自然よりも偉大だと認めてあげるよ」

「認めさせてやる。神より偉大な者など存在せん!」

 アキハイトは怒りに我を忘れようとする。でも出来ない。冷徹で冷静な彼はどんなに怒っても頭の中は醒めている。

 神を思わせる壮大にして雄大なる樹木の巨人に畏怖を覚える。圧倒される。しかし神の使徒たるパラディンが神以外を畏れ敬うなどあってはならない。

 怒り狂う振りをしてでも自分を奮い立たせ挑まねばならない。大自然の脅威の体現。こんな事態は想定していなかった。しかし戦わねばならない。畏れ敬い屈するなどあってはならない。

「おおおおおおおお!」

 アキハイトは怒号で自分を震い立たせ、白銀に輝く剣を夜空に掲げ、畏怖を覚える存在へ突進した。

posted by 二角レンチ at 21:42| ドルイド少女ワンカナ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年02月19日

ドルイド少女ワンカナ(4)神の雷

ドルイド少女ワンカナ(4)神の雷

 巨大な樹木で編まれた巨人。夜の闇の中でも神々しく、まるで輝くように温かい新緑。広場の中央にあった焚火は地面から大木を生やしたときにもう砕け消えている。でもわずかに発光するような美しい巨人がはっきりと、誰の目にも見えている。

 広場の端、森の木々の間でそれを見ていた族長が震え膝をつく。

「おおおお……なんと……あんな……あんな事がドルイドに出来るはずがない」

「親父」

 若者でありワンカナの夫となるギンギラが年老いた父親の背に手を置いて労る。

「いったい何が起こっているのだギンギラ。あのような樹木の巨人をドルイドが生み出せるわけがない。巨人を作る魔術などドルイドは持っておらん。あれはまるで魔物ではないか。人の形をして動いておる」

「わからねえよ親父。あんなのドルイド魔術にはねえ。でも植物を操るドルイドの魔術に見える。今まで誰も知らなかったドルイド魔術じゃねえのか」

「そんな物は無い。ドルイドの神秘は全て暴かれ解明されておる。わしらの知らないドルイド魔術など存在するはずがない。たとえわしらには力が足りずに使えない魔術だとしても、先祖代々伝えられた知識に無い魔術など無いのだ」

「じゃあ何なんだよあれは」

「わからぬ。しかし怖ろしい。あのような事はあってはならない。樹木で魔物を作り上げるなど、自然への冒涜だ……」

 自然を愛し自然に助けを乞うドルイド魔術。それがあのように、大木の森をすべてねじふせねじれ編み上げ自分の意のままに従わせるなどあってはならない。自然には助けてもらうのであって自然をねじ伏せ奴隷にするなどあってはならない。

「ワンカナはドルイドではない。あのように自然を奴隷にするような魔術を使ってはならない。あの子は魔物を生み出す悪魔だ。存在してはいけない……」

「親父? おいしっかりしろよ。驚いたのはわかるよ。でも何言っているんだよ。わけわかんねえよ」

 年老いた族長は目が飛び出そうなほど見開き、息子に掴みかかる。

「ワンカナは悪魔の子だ。ドルイドではないのだ。ワンカナの母と父を連れて来い。きっと悪魔と交わりあの子を産んだのだ。ワンカナは忌まわしい儀式で産み出した悪魔の子に違いない」

「親父! しっかりしろよ。悪魔なんていない。あれは存在しない恐怖を語るために作った幻想だ。この世には怖ろしい化け物なんてのは、魔物以外にはいないんだよ!」

「ええいうるさい。早くワンカナの母と父をここへ。きっと悪魔と三人で交わるおぞましい儀式を経てワンカナを産んだのだ。問いただし白状させねば。早く二人を連れて来い!」

 族長の命令には誰も逆らえない。族長やギンギラを始め十数人は、ワンカナの戦いを見る代わりに森の奥へ引っ込みおぞましい尋問を始めた。

 戦闘に集中しているワンカナはそんな事を知らない。自分がドルイド魔術の限界を超えた魔術を行使した事で、両親が疑われ危機に陥っている事など知らず、隠していた力を見せつけ振るう興奮に酔いしれていた。

「あはははははは! ほらほらどうしたの。パラディンって強いんでしょ。どうして逃げてばかりなのさあ」

 アキハイトは答えない。必死だった。全力で巨人の攻撃を回避しながら隙をうかがう。

 大木がねじれ編まれた樹木の巨人。その拳は人の体躯の何倍もある。指一本で大の大人一人の胴ほどもある。その巨大な拳が轟音と突風をまき散らしながらアキハイトに迫る。

 風圧だけで凄まじい。その風の抵抗を突き破るパワーとスピード。食らえばひとたまりもない。

 アキハイトは白銀の剣を横に一閃する。巨大な木の手が横に切り裂かれ、切断された指が吹っ飛んでいく。

「あははは。無駄だってばあ」

 木は生え生い茂る。指を切り落とされた拳は、すぐに成長し断面から木が伸びねじれ指となる。

「くそ。治癒魔術以上の再生力。魔物でもこんなに強靱な再生を行う種はいないというのに」

 アキハイトが今まで戦った怖ろしい力を持つ魔物たちに匹敵する。樹木の巨人はまるで魔物だ。それもとびきり強い。パワーとスピード、巨体に再生。ちっぽけな人間では大自然の壮大なる脅威に太刀打ち出来ない。

 離れて見ているアキハイトの仲間の大男、ベイドがつぶやく。

「おいおいまさか。アキハイトの野郎負けるんじゃねえだろうな。まああいつが負ける所は見てみたいが、魔物ならともかく人間相手に負けてんじゃねえぞ」

「ベイド。あんたならあれに勝てる?」

 ベイドは横にいる恋人の女性、ラズリの問にあっさり答える。

「当たり前だろ。俺なら楽勝だ。俺のソーサラー魔術は幻惑。あの巨人がいくら強くて幻惑が効かないとしてもだ。あの巨人に乗って操っているのはワンカナだ。あいつを幻惑して倒せばいい。俺なら楽勝だぜ」

「私だって、大規模な火炎魔術で倒せるわ。あんな木の塊。森だって焼き尽くせる私のメイジ魔術なら楽勝よ」

「だがアキハイトはあの巨人を突破してワンカナを倒せない」

「ええ。アキハイトは勝てないわね。いい気味。やっぱりパラディンが世界最強の魔術師だなんてちょっと持ち上げ過ぎよねえ。私たちの方があいつなんかよりよっぽど強いわ」

「だな。はっはっは」

「くすくすくす」

 真っ向勝負ではアキハイトにかなわない二人は、ここぞとばかりにアキハイトを見下しこき下ろす。魔術には相性があり、どの相手にも必ず優位という魔術は存在しない。

 アキハイトのパラディンというクラスは、遠隔戦を苦手とする。神の名と力を背負って戦うので、正々堂々正面からの一騎打ちをする事しか出来ない力なのだ。

 だからこのように、巨大な身体で再生力も凄まじい巨人相手にはそれを突破出来ない。巨人を操るワンカナの所までたどり着いて倒す事も、巨人自体をラズリのメイジ魔術のように焼き尽くすなどして倒す事も出来ない。

 樹木の巨人の拳をアキハイトはかわしきれず、左手の大きな盾で受け止める。強力な魔術で編まれた魔術武装は普通砕けない。しかし巨人のパワーは凄まじく、強固な盾がひしゃげる。

「ぐっ、強力な攻撃すら受け止め弾くこの盾が歪むなど。なんというパワーなのだ」

「ほらほらほらほら。もう打つ手無しでしょ? 降参しなよ。でないと痛い目見ちゃうよー?」

 ワンカナは巨人の頭の上で大笑いする。隠していた巨人の魔術を存分に振るい、簡単には倒せない強者をなぶる。実に楽しい。村人たちを怖がらせないためずっと力を隠してくすぶっていたワンカナは、力を思い切り使えて実に楽しかった。

「神の名は伊達ではない。神の力を背負い神の代行者たるパラディンの力を侮るな」

「なら力を見せてよ。その剣は凄い切れ味だね。でも斬っても斬っても即座に再生する樹木で編まれた巨人は倒せないよ。この巨体を全部一撃で切り刻むなんて出来ないもんねー?」

「たしかに。しかし樹木は樹木。硬さが足りない。突破は出来る」

「やってみせてよ。ほらあ」

 巨人が足を上げる。地団太を踏むように地面をがんがん蹴りまくる。アキハイトを踏み潰そうとするたび地面に大きな穴を空け地震を起こす。ベイドたちはまだ踏ん張れるが、広場の端で森の木々に隠れるようにして観戦している村人たちはその振動で立っていられず倒れてしまう。

「ほらほらほらほらあ! 踏み潰しちゃうぞ! 早く降参しなって。見苦しいなあ」

「黙れ。いや、黙らせてやる」

 アキハイトが左手の盾を光の帯に分解して消す。そして両手で剣を握って構える。

「神の一撃はいかなる敵をも貫き絶命させる。防御が弱い巨人はこの一撃を防げない」

 アキハイトの剣がまぶしく輝く。力が噴出し光がまるで炎のように噴き出す。

「う、何?」

「神の雷(いかずち)。神の力を借りて行使するパラディンの力を思い知れ!」

 アキハイトが吠える。構えた剣が膨大な電撃を放ちアキハイトごと包み込み、まるで巨大な雷になったかのようだ。

 その剣を突き出したまま突進し、アキハイトを踏み潰そうとした巨人の脚を木っ端微塵に砕く。

 そのままならまた即座に再生される。しかしこの一撃は止まらない。突進。雷が天から地へ落ちるように、地から天へ向かって昇っていく。

「な、こんな、突破力」

 再生しようが巨大だろうが関係ない。神の雷は突進する途上にある全てを粉砕する。何者にも阻めない。剣から電撃をほとばしらせ全身が包まれたアキハイトはまるで一筋の雷のように、巨人の脚を砕きそのまま胴を貫き一直線に頭まで到達して粉砕した。

「うぎゃっ」

 あまりの衝撃にワンカナは吹っ飛ぶ。身体の半分を粉々に吹っ飛ばされた巨人の頭からワンカナは落下する。

 雷の一撃を間近に浴びるショックで気を失ったワンカナは、剣を収めて巨人の頭を蹴り飛び降りたアキハイトに空中で抱き止められる。

「う……?」

 目を覚ましたワンカナはアキハイトに抱き上げられる格好となっている。アキハイトは兜を解除し顔を見せる。

「勝負はついただろう。まだ負けを認めないか?」

 アキハイトは真顔だ。いつもの表情。しかし慈しむような目に見える。ワンカナはドキッとした。

(な、何? アキハイトに見つめられるとドキドキしてくる。僕の自慢の巨人を倒して僕を負かした。こんな強い人がいるなんて。きっとびっくりしてドキドキしているんだ)

 十八歳になったら大会を開き、強い順に結婚相手を決める。その村のしきたりの中で育ったワンカナは恋を知らなかった。だからこれが、自分よりも強いと初めて認め、しかも恰好いい男に惚れてしまった初恋だとはわかっていなかった。

 ワンカナは頬を赤く染めながらぷいっと横を向く。なぜか恥ずかしくてアキハイトの顔が見られなかった。

 樹木の巨人の残った半身がぼろぼろ崩れていく。木っ端になり微塵と化して消えていく。木っ端が降り注ぐ夜の上空を舞い降りながら、アキハイトに抱かれたワンカナはずっとこのままでいたいなとなぜか思った。

 高い上空から着地したアキハイトの両足は地面にめり込む。しかし事も無げに足を地面から引き抜き抱いていたワンカナを下ろす。

 ワンカナはうつむいたままぼそぼそと言う。

「ぼ、僕の、負けだよ。うん。アキハイトは強かった。気絶して落下する僕を助けてくれて、あり、ありがと……」

「礼には及ばん。決着はついたのだ。それにお前に頼みがある」

「え?」

 アキハイトは無表情のまま手を差し出す。

「お前を認める。正直侮っていた。すまない。ドルイド魔術で聞いた事も無い樹木の巨人。凄かった。あれほど凄い力を持つなら俺たちと並び戦える。お前ほど強い者を見つけるのはとても難しい。ぜひ力を貸してくれ。魔王を討つ使命を果たす。生きて帰れる保証は無い。それでもどうか、その力と命を俺に預けてほしい」

「で、でも」

 ワンカナは戸惑う。どうしていいかわからない。村を出るなど考えた事も無い。そうしたいと思った事も無い。

 知らない外の世界に興味はある。でも恐怖もある。安心出来て大好きなみんながいるこの村を出たくない。

「僕、村のみんなが好きで、この村が好きで、一生ここで暮らしたいと思っていた」

「ああ」

「だから、その、ごめん。うれしいんだけど、力になりたいけど、でもやっぱり、僕はこの村に残……」

「出ていけ!」

「え?」

 ワンカナの背後から声がした。村人の声だ。ワンカナは驚いて振り返る。

 広場の端の森の木々に隠れるようにして、村人たちがいた。みんな怒りに顔を歪ませている。ワンカナを明らかに敵視している。

「出ていけ! 悪魔の子! お前は人間じゃない。ドルイドでもない。異常な化け物、悪魔の子だ。お前の両親が白状したぞ。悪魔と共に三人で交わるおぞましい儀式でお前を産み出したとな!」

「え? え?」

 ワンカナはわけがわからなかった。どうして大好きな村のみんなにこんな汚物を見るような目で睨まれ、ひどい事を言われなければならないのだ。

posted by 二角レンチ at 20:19| ドルイド少女ワンカナ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年02月20日

ドルイド少女ワンカナ(5)死後の遺言

ドルイド少女ワンカナ(5)死後の遺言

 戦いが終わった。ワンカナは初めて他人に負けたが、敗北はすがすがしかった。

 アキハイトのそばにいて声を聞くとドキドキする。恋を知らないワンカナはそれが何なのかわからない。戸惑い困惑し、アキハイトとずっと一緒にいたい気持ちはあったが、それでもアキハイトの仲間になって欲しいという誘いを断ってしまった。

 言ってしまったからにはしょうがない。アキハイトとはここでお別れだ。ワンカナは心にぽっかり穴が空いたようなひどい喪失感を味わい、その理由がまるでわからなかった。

 知らない気持ちに困惑するワンカナに、さらに混乱する出来事が起こった。

「悪魔の子め! この村から出ていけ!」

 ワンカナはその声に驚いて振り向く。村人みんなが広場の端の木々に隠れるようにして顔をのぞかせ叫んでいる。みんな怒り恐怖している。ワンカナに。

 どうして? わけがわからない。ワンカナは強さと明るさで村の人気者だった。年齢の割に幼い容姿のおかげで良くも悪くもみんなの妹や子供扱いされ慕われていた。

 こんなに嫌われる理由がわからない。ワンカナは混乱と恐怖に震えながらしどろもどろに返事する。

「あの、何? 何て言ったの?」

 村人たちはひどい罵詈雑言を口々に叫ぶ。ワンカナを嫌いののしっている。ワンカナはそれを聞きたくないと身体が拒絶し、その言葉の意味を頭が理解しようとしなかった。

 年老いた族長が木々の間から出て来て、腕を横に伸ばしてみんなを遮る。その横にワンカナの夫になる若者、族長の末の息子ギンギラも付き添っていた。

 族長はワンカナに恐怖している。震えている。ギンギラに身体を支えられながら勇気を振り絞って声を張り上げる。

「ワンカナ。樹木で巨人を編み上げるなど、魔物を作り出して使役するなど、我らが尊ぶ自然への冒涜だ。自然は助けを借りる物。魔術とは己以外の強く敬うべき存在の助けを借りる事。お前は自然をねじ曲げねじ伏せ魔物に変えてしまい、あまつさえそれを奴隷として使役した。そのような怖ろしい、自然への冒涜はドルイドの魔術ではない。お前はドルイドではない」

 ワンカナは岩で殴られたように頭がガンガン痛むが、必死に言葉の意味を理解しようとし胸に手を当て悲痛な顔で訴えた。

「僕はドルイドだよ。ドルイド魔術しか使えない。樹木の巨人は僕が編み出した新しい魔術なんだよ」

「うるさい。そんな事は不可能だ。魔術は全て賢き先人たちにより暴かれておる。新しい魔術など存在しない。それを編み出す事など出来はしない」

 ワンカナからも村人たちからも離れて広場に立つベイドがそれを聞いてせせら笑う。

「おいおい。魔術ってのはな、強い奴が未知の魔術を暴くものだ。弱い奴には届かない魔術の深淵にまで手を伸ばせる力を持つ奴が、新しい魔術を発見し行使する。そうして歴史を重ねて魔術は進歩し発展してきたんだぜ。何だこのじじい。魔術を暴き切ってもう未知の魔術が無いなんて本気で言ってんのか。頭古すぎるぜ。こんな村に閉じこもって新しい知識を学ばねえからそんな無知な事を平気で言えるんだぜ」

 村で一番魔術に精通していると自負する族長はベイドをじろりと睨む。しかしベイドがにやついたまま目をひんむいて睨み返すと怯えて目を伏せ逸らす。

 ベイドの説明をまるで聞かなかったかのように族長はワンカナに向かって話を続ける。

「ワンカナ。お前はドルイドではない。ドルイド魔術ではない自然を冒涜し奴隷にする魔術を使った。樹木で魔物を生み出すなど。魔物を産むのは悪魔の所業だ。お前は悪魔の子だ。悪魔なのだ。人間ではない」

「どうしてそうなるのさ! 僕は人間だよ。みんなと同じ人間でドルイドだよ。どうして? 何でそんなひどい事言うの?」

「うるさい! お前の両親が白状したのだ。お前は悪魔を交えて三人でまぐわう儀式で産み出した悪魔の子だとな」

「え?」

 ワンカナの理解を超えている。言っている意味がまったくわからない。ワンカナは呆然とする。

「二人をここへ」

 族長が手を挙げると、森の木々の中から村人が数人出てくる。

 狩りで仕留めた獲物を引きずるように、血塗れの何かを男たちは引きずってきて、それを数人がかりで放り投げる。

 ワンカナの前に肉の塊が二つ、どさりと落ちる。それが何なのかわからない。血塗れでぼろぼろでぼこぼこに腫れ上がり、ねじれ引きちぎれ腸が引きずり出されていた。

「何? これ……」

 ワンカナは見てもわからない。何の肉だろう。何の魔物だろう。少なくとも人間には見えない。ぼろぼろで変形しすぎてとても人間だと判別出来る物ではない。

「やはり悪魔の子であったなワンカナ。人間ならば自分の両親ぐらいどのような姿になろうとわかるものだ。お前は人間の腹を借りて悪魔が孕ませ産ませた悪魔の子なのだ」

 無茶苦茶な理屈だ。ある地域で行われている魔女狩りは、熱湯に手足を浸けても火傷しなければ魔女ではないという証明になると言う。人間には無理な事を強いて人間だという証明にするなどとは矛盾にもほどがある。

「僕の両親? でも、これは、人間じゃないよ。肉の塊。僕のお父さんやお母さんじゃないよ……」

「悪魔と交わりお前を産んだとなかなか白状しなかった。そんなになるまで否定し続けた。だが悪魔と交わった者は死ねば人間ではない正体をさらけ出す。それが人間に見えないのだろう? よって悪魔と交わった、人間を辞めた者だという証拠だ」

 人間が人間に見えなくなるまで殴り蹴り叩き潰し引き裂き引きずり出した。こんな拷問をされて人間の原型を留められるわけがない。

 あまつさえ、そうまで拷問しておいてそのなれの果てが人間に見えないから人間ではなかった証拠などとは。あまりにも鬼畜な理屈。人間の道理ではない。

「僕の、お父さんとお母さん。嘘。こんな。こんなに、なるまで」

 ワンカナはわなわな震える。麻痺した思考を必死に動かし、その原因を突き止める。

「僕が、樹木の巨人を見せたから? 凄い力をひけらかしいい気になったから? だから、ドルイドじゃないって、人間じゃないって疑われて、それでお父さんとお母さんが悪魔と交わったって疑われて」

「そうだ。ようやくわかったか。この悪魔め。わからない振りをしてとぼけるとはなんたる醜悪。お前の両親と同じく汚らわしい」

「お父さん、お母さん! うわ、うわああああああ」

 ワンカナは泣きながら、地面に投げ捨てられた人間には見えない死体にすがりつく。

「僕が、凄い力を持って、それを見せびらかしていい気になって、だからこんな、こんな目に、うえ、ふえええええええええん」

 ワンカナはおいおい泣く。誰も何も言わない。

 ベイドはへらへらしながら隣のラズリに話しかける。

「おいおい。未開の部族だからって悪魔なんて迷信を信じているのか。まったく世間と交流しない世間知らずはこれだから。ワンカナがいくら強くても人間だしドルイドなのによ。悪魔の子だって疑ってその両親を尋問の拷問で殺した? はっはっは。こりゃうける。道化のショーを見るよりおもしれえや」

 ラズリもくすくす笑って答える。

「まったく。未開の部族の野蛮な習慣。面白いわね。悪魔なんて信じてこんなひどい事をする原始人がまだいたんだ? あはははは。おっかしい。檻に閉じ込めた変な魔物の見せ物よりも面白いわね」

 ワンカナは両親が無惨な拷問で殺されたのを笑う二人を振り返り弱々しく睨む。

「何、笑っているの? 何がおかしいの? ねえ、ねえったらあ」

 ベイドとラズリはげらげら笑う。ベイドが腹を抱えて大きく息を吐く。

「はー。笑った笑った。未開人とか馬鹿とか見るのっておもしれえなまったく。あー、だが悪かったな。お前の両親が殺された事を笑ってよ。おわびに俺がお前の復讐を手伝ってやるよ」

「え?」

 黙っていたアキハイトが口を挟む。

「おいベイド」

「わかってるって。人間の魂は神から授かった尊い物だから、奪ってはいけないってんだろ。毎度毎度うるせえよ。お前に合わせて殺さないでやるんだぜ。だから邪魔するな。殺しはしねえ。こいつらは見せ物としては面白い。だが反吐が出るほどむかつくぜ」

 いつも残酷な事を言い、今だって恋人のラズリと一緒にワンカナの両親がなぶり殺された事を笑った。底抜けに邪悪でひどい男のベイドが、一体何にむかついているのか誰も理解出来ない。

 ただの口実だろうか。ワンカナの両親の無念を晴らすべく復讐を肩代わりする。魔術で人を苦しめ楽しむための詭弁なのだろうか。

 ワンカナにはわからない。両親の死が悲しすぎるし、自分のせいでこんなひどい苦痛と死を迎えるはめになってしまった事が申し訳なかった。ワンカナは悲しみの涙で怒りの炎を鎮火し怒れない。何も出来ず考えられず、ベイドがする事をそのまま呆然と見ていた。

「死には死を。でもアキハイトが死刑は駄目だと言うんでな。死を味わうだけで許してやる。命は助かるんだぜ。パラディンさまさまだな。感謝しろよ。本当ならむかつくお前等全員ぶっ殺してやる所なんだからな」

 ベイドが両手を広げゆるゆるとうごめかす。蛇がゆっくりのたうつような気持ち悪い動き。そしてベイドの両腕からにじみ出るように黒い霧が漏れ出した。

 ベイドから溢れ出た黒い霧がワンカナに迫る。ワンカナは何をされるのかわからないが、もう何も考えられず動けなかった。

「邪魔だぜワンカナ。どいてろ」

 ワンカナはそう言われても動けない。黒い霧はワンカナをよけるように回り込み、ワンカナの両親である肉の塊の死体を包み込みしみ込んでいく。

「ちょ、ちょっと、何しているの。僕のお父さんとお母さんにひどい事しないで」

「ひどい事? 逆だぜワンカナ。こんないわれのない疑いをかけられ拷問されて殺された。さぞかし無念だろうなあ。無実には事実を。自業自得でなく理不尽な死を遂げたばかりの死体に無念を晴らさせる。わずかな時間の自己弁護。ソーサラー魔術、死後の遺言。見ない方がいいぜ。夢に出てくるぞ」

 ワンカナは何を言われているのかわからない。黒い霧を吸い込んだ両親の死体をじっと見つめる。

 動かぬ死体がぴくりと動く。びくびく鳴動し、そしてがばっと立ち上がる。

「ひいっ!」

 ワンカナは驚いて尻餅をつく。腰を抜かす。森に住む怖ろしい魔物相手でも腰を抜かした事はない。でも死体が動き出すなんて事はどんな強者の胆力も恐怖で押し倒す。

 手足が折れねじ曲がっている。首もねじれている。頭はひしゃげ腫れ上がり人間の顔でなく巨大な肉の玉と化している。腹は引き裂かれ内臓がどろりと垂れ下がっている。性器も潰され裂かれもはや男女の区別も付かない裸の肉塊二つが立ち上がり、人間の原型を留めていないのに折れた足でよろよろと立っている。

「うわあああああああっ!」

 村人たちがみんな悲鳴を上げる。死体が生き返り動くなんて怖ろしすぎる。初めて見る恐怖。魔物なんて比べ物にならない怪奇に心がへし折られる。

 次の瞬間、とても動けないようにしか見えないぼろぼろの死体が、折れた脚をへし曲げ血だか汁だかをぶちゅっと吹き出しながら跳躍した。

 二人の死体が族長とその息子に襲いかかる。二人は恐怖のあまりドルイド魔術で抵抗する事も出来ず、ただのしかかられ押し倒された。

「うひいいいいいっ」

 ギンギラが叫ぶ。族長は悲鳴すら上げられないほど恐怖におののいた。

「よくも」

 歯が全部折れ舌を抜かれのどを潰された死体がしゃべった。とても濁って人間の声には聞こえないが、それでも間違えようもない両親の声を聞いて、ワンカナはぽろりと涙を流した。

「よくもよくもよくもよくも。あんな拷問を、疑いを、殺しをしてくれたなあああああ。ワンカナは私たちの大事な子。悪魔の子なんかじゃない。人間の、誇れる立派な自慢の娘なのよおおおおおおおお」

 人間には見えない死体が、母が濁った声でワンカナが悪魔の子ではないと訴えてくれている。どんな拷問を受けても殺されてもワンカナを悪魔の子だと認めなかった。それは死んでなお貫く真実。

 ベイドが語る。

「生者は嘘をつけるが死者は嘘をつけない。この魔術は死体から死の間際に知った情報を聞き出すために使う。攻撃力はねえよ。だがこれでもまだこの二人が、ワンカナを悪魔の子だと自白したと言い張るのか?」

 ぐちゃぐちゃの肉の塊が族長とその息子ギンギラにのしかかり抱きしめ離さない。必死にワンカナが悪魔の子ではないと、自慢の娘だと言い続けている。

「もういいから。もういいんだよお父さん、お母さん。もう苦しまないで。安らかに眠ってくれていいからあああああ!」

 ワンカナは泣きながら両親の死体の背に抱きつく。両親の死体はぴたりと動きを止める。

 そして崩れていく。死体がぼろぼろと崩れ黒い霧になり、狼煙のように天に昇っていって完全に消えてしまった。

「この魔術は死体を消滅させちまう。死体の持つ負のエネルギーを活用し動かし死体を燃料として燃やしちまうからな。死体を埋葬してやれなくなる。しかし恨みよりも残される娘の安否を気遣う優しい親だったな。お前は本当に愛されていたんだなワンカナ」

 あの口の悪いベイドがなぜか神妙な事を言う。しかしそれは嘘ではない。真実の響きがあった。だからワンカナの心を打ち、涙をこぼさせた。

「ううう……ありがとうベイド。僕は本当に、お父さんとお母さんに愛してもらえていたんだ。拷問され殺されても僕を悪魔の子だなんて言わなかった。それを知らないままだったらきっとそうかもしれないと思って僕は両親を疑い恨んでいたかもしれない。ありがとうベイド。僕のために、両親を疑うわずかな疑念を払拭してくれて」

「よせよせ。そんなきれいな理由じゃねえよ。俺は復讐が好きなんだ。自分のだけじゃ足りねえ。他人の復讐だって手伝い復讐の暗い快感を味わうんだよ。ほれ見ろ。きっちり復讐もしてやったぜ」

「え?」

 ワンカナが前を見る。地面に倒れてびくびく震えている族長がだんだん動かなくなっていく。

「お、親父? お、おいっ」

 死体に抱きつかれ恐怖に泡を吹いていたギンギラが、父親の様子がおかしいので心配する。

「親父? おい嘘だろ。親父。親父いいいい!」

 村人たちに命令してワンカナの両親を尋問のため拷問させて殺した。その死体にのしかかられ責め苛まれた族長は、己のしでかした罪に報復される恐怖のあまり心臓が麻痺して死んでしまった。

「へっへっへ。後ろめたいほどその罪に報復される恐怖が増す。自分が悪くないならもっと強く立ち向かえるものだ。族長は罪に責められる恐怖のあまり死んじまった。それだけ重い罪をしでかしたって自覚していた証拠だな」

 アキハイトが静かに抗議する。

「ベイド。殺すなとあれほど」

「おいおいアキハイト。こいつが死んだのは自業自得だぜ。歳取って心臓も弱いくせに重い罪をしでかすからだ。罪は必ず返ってくる。罪に復讐される。因果応報って奴だな。この魔術で死ぬ奴なんて滅多にいないぜ。よほど後ろめたく罪の重さに耐えられない奴だけだ」

 ギンギラは父親の亡骸に覆い被さりおいおい泣いている。族長の他の息子や娘たちも駆け寄って来る。

 ワンカナはいろいろ悲しすぎてぽろぽろ泣く。両親の死体が消滅してもう埋葬してあげられない。でもあんな無惨な死体のまま土の下で眠ってもきっと痛くて安らかに眠れない。これでよかったのだ。きっと。

 ワンカナはぐしぐしと腕で涙を拭う。まだ涙はこぼれるが我慢し、涙声でアキハイトに訴える。

「アキハイト。僕、君たちと一緒に行くよ。魔王とでも魔物の軍勢とでも戦うよ。死んでも構わない。だからお願い。ここから連れ出して。僕もうここにいたくないよお……」

 大好きな村人たちに裏切られ憎まれ両親を殺された。もうワンカナは村人たちと一緒にいたくなかった。

 アキハイトは何も言わない。相変わらずの無表情だ。しかし白銀の甲冑を解いて消し、ワンカナを両腕で抱きしめてあげた。

「うっ、うっ、うわ、わああああああん」

 ワンカナはアキハイトの胸にしがみつき大いに泣いた。アキハイトは何も言ってくれなかったが、強く抱きしめ続けてくれた。

posted by 二角レンチ at 20:34| ドルイド少女ワンカナ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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